研究課題/領域番号 |
23KF0209
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
矢守 航 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (90638363)
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研究分担者 |
SHEN HAO 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2023-11-15 – 2026-03-31
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キーワード | 変動光 / 光合成 / Rubisco / 電子伝達 / CO2 |
研究実績の概要 |
これまで、植物の光合成能力を改良することで生産性の向上を目指した研究が多く行われているが、ほとんどの場合、定常光における光合成反応が研究対象となっていた。しかし、野外環境において、光は雲や植物体自身の遮蔽によって激しく変動している。従って、変動する光環境における光合成能力の向上を目指す必要があるが、現在のところ非定常な光環境に対する光合成応答メカニズムに関して不明瞭な点が多い。これまでの受入研究者らの研究成果によって、非定常な光環境に対する光合成応答には大きく3つの要因が関与していることを明らかにしてきた。葉緑体チラコイド膜の電子伝達によって光エネルギーを化学エネルギー (ATPとNADPH)に変換する過程、CO2固定の鍵酵素であるRubiscoの活性化状態、そして、大気中のCO2を葉内に取り込む「玄関」となる気孔の開度である。これら3つの要因が調和して初めて高い光合成活性と植物成長が期待できるため、光合成能力を向上させるには、光合成の変動光に対する応答機構を統合的に理解した上で戦略を考える必要がある。 そこで本課題では、モデル植物であるシロイヌナズナ、主要作物であるイネやトウガラシ等を用いて、変動光に対する光合成応答に関する遺伝的メカニズムの解明を目標とする。 今年度は実験系のセットアップを第一優先として、光合成解析装置(クロロフィル蛍光解析)を用いてイネとトウガラシの光合成誘導を解析した。特に今回、コルクポーラーでリーフディスクを作製し、光合成可視化装置(Imaging PAM, Walz)を使用して、クロロフィル蛍光に基づき光合成の光応答を評価する実験系を立ち上げて、多品種を同時に解析する実験系を構築することができた。次年度に向けて十分な予備実験ができたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究を開始するにあたって必要な実験装置や植物材料の準備を終え、予備実験を開始することができた。2024年度に本実験を開始するにあたって予定通りに準備することができたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
野外環境において、光は雲や植物体自身の遮蔽によって激しく変動している。植物の光合成と生産性を向上するには、変動する光環境における光合成能力の向上を目指す必要があるが、現在のところ非定常な光環境に対する光合成応答メカニズムに関して不明瞭な点が多い。これまでの受入研究者らの研究成果によって、非定常状態における光合成は、1)光合成電子伝達、2)Rubisco活性化制御、3)気孔開閉によって大きな影響を受けることが分かってきた。そこで2024年度は、様々な品種のイネとトウガラシを用いて、光の変動パターンの違いが植物の光合成と成長に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。最初に昨年度に構築したリーフディスクを用いた実験系を用いて、多量サンプルを用いた光合成誘導の同時測定を行う。それらの結果に基づいて、特徴的な品種においては、ガス交換測定とクロロフィル蛍光の同時解析によって、光合成誘導の品種間差を生み出すメカニズムを詳細に解析する。最終年度の2025年度には、シロイヌナズナのエコタイプを用いて、光合成誘導のエコタイプ間比較を行い、光合成誘導の品種間差を生み出すメカニズムを解析する。最終的には、変動光環境における光合成応答の包括的理解から、変動光環境における光合成系の最適化モデルを構築する。
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