研究課題/領域番号 |
23KF0269
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
北 潔 長崎大学, 熱帯医学・グローバルヘルス研究科, 教授 (90134444)
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研究分担者 |
ACHARJEE RAJIB 長崎大学, 熱帯医学・グローバルヘルス研究科, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2023-11-15 – 2026-03-31
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キーワード | マンソン住血吸虫 / ミトコンドリア / 硫化水素代謝 / エネルギー転換 / 生化学的解析 / 構造生物学的解析 / 化合物探索 / ケミカルバイオロジー |
研究実績の概要 |
住血吸虫症はWHOにより顧みられない熱帯病に指定されており、流行地域で約2億5800万人が感染し、アフリカだけで、年間20万人以上の死者が出ている。住血吸虫の中では、マンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)が最も被害が多く、唯一の治療薬としてプラジカンテルが使用されているが、成体に対して有効性を示すが、幼虫には全く有効ではない。そのため、プラジカンテルとは異なる作用機序を有する新規抗寄生虫薬の開発が求められている。S. mansoniの成虫は門脈系に寄生し、腸管内の硫化水素(H2S)の一部が吸収され肝臓で代謝されるために運ばれる寄生環境である。高濃度のH2Sはミトコンドリア呼吸鎖を阻害することで毒性を示すが、腸管寄生虫は高濃度H2S環境にトロピスムを示し、寄生環境に適応している。 近年、哺乳類のミトコンドリアでH2S代謝が行われ、H2S:キノンオキシドレダクターゼ(SQOR)、パーサルファイドジオキシゲナーゼ(PDO)、亜硫酸酸化酵素(SUOX)、およびロダネーゼ(Rhoda)の4つのミトコンドリア酵素群がH2Sの代謝に関与することが判りつつある。本研究では上記4酵素の生化学的性質と結晶構造を明らかにし、H2S代謝を阻害する化合物探索を行い、ケミカルバイオロジー解析により、マンソン住血吸虫の生活環においてH2S代謝の存在意義を理解することを目的としている。 これまでの研究で、マンソン住血吸虫のSQORとSUOXの生化学的解析を行ってきており、初年度は5ヶ月間と短く、残りのPDOとRhodaの組換え酵素の精製と抗体作成を行った。その結果、PDOと2種類のRhodaにおいて、大量精製と各酵素に特異的に反応する抗体の作成ができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始5か月で、PDOと2種類のRhoda(a.k.a., Thiosulfate sulfur transferase III-like protein A and B; TSTL3AとTSTL3B)を大腸菌発現用にコドンを最適化し、過剰発現と大量精製を行った。また、上記3酵素のペプチド抗体を作製し、各酵素に特異的に反応することを精製酵素で確認した。さらに、結晶化条件検討も開始した。初年度の残り7ヶ月間では、生化学的解析と結晶構造解析を進める予定であり、当初計画した通りに、研究は概ね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度は2023年の11月末から開始しており、研究機関はおおよそ4ヶ月間と短かった。2024年度では、精製方法を確立したPDOとTSTL3AとTSTL3Bの生化学的解析を行い、結晶化条件を確立する。また、SQOR、SUOX、PDO、TSTL3A/Bのうち、SQORはヒトの酵素と基質特異性が異なり阻害剤結合部位の構造がマンソン住血吸虫のSQORと異なることが予想される。また、H2S代謝においては、SQORが初段階の反応であり、H2S代謝経路においては重要だと思われる酵素であるため、SQORを用いて阪大化合物ライブラリーを用いて、阻害剤探索を行う。 この結果をまとめ、第97回日本生化学会(横浜)で発表をする。
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