研究課題/領域番号 |
23KJ0012
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小田島 良 北海道大学, 文学院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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キーワード | 中世神道 / 日本中世文学 / 中世文学 / 神皇正統記 / 五山僧 / 吉田兼倶 / 吉田神道 |
研究実績の概要 |
吉田兼倶の『日本書紀』(『書紀』)講釈の聞書を、①通時的な視点(先行する言説との関係)と②共時的な視点(当時の人的ネットワークとの関係)から分析するという当初の研究目的に即して実施した。令和5年(2023)度の実績は以下の通りである。 ①通時的な視点 先行する言説として南北朝期の北畠親房による『神皇正統記』(以下『正統記』)との関係に着目した。兼倶の『書紀』講釈に『正統記』が受容されていることは既に先行研究で指摘されていたが、それは一部の指摘にとどまっており、具体的な読解・分析が行われていなかった。それに対して、兼倶の『書紀』講釈の聞書における『正統記』が受容された箇所を洗い出し、兼倶が『正統記』をいかに受容し、そして読み替えているのかを明らかにした(この成果は北海道大学国語国文学会令和五年度大会での発表、及び『国語国文研究』 (162)掲載の論文として公表)。また、兼倶が受容した『正統記』そのものについても、とくに禅籍との関係について研究を行った(この成果は『国語国文』92(10)掲載の論文として公表)。 ②共時的な視点 当時の人的ネットワークとの関係として、兼倶の『書紀』講釈に列席していた五山僧との関係に注目した。従来、兼倶と五山僧の関係は、諸教一致の宗風を持つ五山僧が兼倶の『書紀』講釈に参じたという、五山僧側からの一方的なものとして把握されてきた。それに対して、兼倶の『書紀』講釈の聞書に禅籍・漢詩文といった五山の学問が受容されていることを分析し、兼倶側もまた五山僧からの影響を受けて『書紀』講釈を行っていたことを明らかにした(この成果は2023年度中世文学会春季大会で発表し、現在論文として投稿中である)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果として査読論文を2本発表し、学会発表を2回行った。これらの成果によって、吉田兼倶の『書紀』講釈にあらわれた室町期の知のネットワークを通時的・共時的に描き出すという研究目的に向けて、順調に研究を実施することができている。
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今後の研究の推進方策 |
吉田兼倶の『書紀』講釈の聞書について引き続き分析を行い、その成果を論文や学会発表というかたちで公表していく。今後も①通時的な視点(先行する言説との関係)と②共時的な視点(当時の人的ネットワークとの関係)の二つの視点から検討を行う。とくに後者の共時的な視点について、これまで五山僧との関係に着目して分析を行ったが、今後は三条西実隆をはじめとする公家や、陰陽道の賀茂氏との交流にまで視野を向けながら研究としてまとめていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
各大学・資料館によるデジタルアーカイブの充実によって、研究に必要な資料がインターネット上に公開されたことにより、当初予定されていた現地調査の必要が減ったことが原因として挙げられる。また、次年度は本年度あまり手を付けることのできなかったDH(デジタル・ヒューマニティーズ)の技法を活用することに予算を割く予定である。
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