研究課題/領域番号 |
23KJ0024
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
鈴木 涼太 北海道大学, 総合化学院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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キーワード | 開環交互共重合 / 開環重合 / カチオン重合 / 酸性触媒 / ポリブチレンサクシネート |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、酸性触媒を用いた環状酸無水物と環状エーテルのカチオン性開環交互共重合法の確立である。これを達成するため、本年度は触媒のスクリーニングや重合条件の最適化などを行った。 具体的には、まず触媒の検討として、開環重合に対する触媒活性が報告されているジフェニルリン酸、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、およびトリフルオロメタンスルホンイミド (TFSI) を検討した。モノマーに無水コハク酸(SA)とテトラヒドロフラン(THF)を用い、60℃、無溶媒条件下での重合を試みた。その結果、ジフェニルリン酸やトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランでは重合の進行が観察されず、TFSIを用いた場合のみモノマーの消費が観察された。得られた生成物の構造解析を目的とした核磁気共鳴 (NMR) 測定からは、SAとTHFが交互に反応しているわけではなく、THFが過剰に反応していることが判明した。次に、反応温度を60℃から100℃に変更して同様の重合を行ったところ、SAとTHFが交互に反応した生成物を得ることに成功した。生成物の詳細な解析を目的に、サイズ排除クロマトグラフィー (SEC) およびマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析 (MALDI-TOF MS) 測定を行った結果、得られた生成物はモノマーであるSAとTHFが交互に開環した環状のオリゴマー (cyclic-oligo(SA-alt-THF)) であることが分かった。SAとTHFの交互共重合体であるポリブチレンサクシネートは安定性の影響により環状オリゴマーを形成しやすいことが報告されており、高分子量化が難しいことが示唆された。現在は、溶媒の有無や触媒濃度などを変更して共重合を試みている際中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までの進捗状況として、酸性触媒のスクリーニングや反応温度条件の影響評価を完了した。また、SAやTHF以外のモノマーについても検討を進めており、高分子量体の合成を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、高分子量体を合成するために、置換基を有するモノマーや多環式モノマーを利用する。これによりPBSのようにオリゴマー状態で安定することなく高分子量体の生成が期待される。具体的には、2-メチルテトラヒドロフランや5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物といったモノマーを検討中である。さらに、モノマーの構造と生成物の分子量に関する相関を明らかにすることにより、本重合の適用範囲を調査する。
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