金属-絶縁膜-半導体(MIS)構造HEMTの実用化において、順バイアス領域での電流非線形性は重要な課題である。バイアス条件によっては、ヘテロ界面でのチャネルだけではなく、絶縁膜/半導体(IS)界面でのチャネルも介したパラレル伝導が挙げられる。IS界面での移動度を向上させ、パラレル伝導が生じる際の線形性劣化を抑制することは困難であり、異なるアプローチが必要である。そこで、従来のAlGaNバリア層の上に禁制帯幅が広い高Al組成のAlGaN層を薄く成長させ、バリア層を2層構造を設計し、試作を行った。Al組成65%のAlGaN層を2.5nm、Al組成21%のAlGaN層を18.5nmとした、ヘテロ構造をGaN基板上に結晶成長させ、その後、MIS-HEMTを作製した。比較用試料として、Al組成21%のAlGaN層を21nm成長した構造も用意した。両構造におけるMIS-HEMTの容量-電圧特性と伝達特性の比較から、移動度の低いIS界面チャネル形成前に、2層のAlGaN界面チャネルを用いることで、電流線形性の劣化を抑制されることが確認できた。しかし、この界面での移動度は期待するほど高くなく、これは、2層のバリア層の設計に課題があると考えらる。構造を改良することで、より線形性の高いMIS-HEMTが実現可能である。 異なる条件で成長したAlGaN/GaNヘテロ構造を用いて、AlGaN表面近傍領域が電気的特性に与える影響について調査した。電気的特性評価には、オーミック特性を用い、表面分析としてX線電子分光法を、低損傷エッチング可能な光電気化学(PEC)エッチングを用い、これらを組みあわせて解析を行った。オーミック特性が悪い試料においては、XPSから表面フェルミレベルピンニング位置が他に比べて深くなっていることが明らかになり、PECエッチングにより表面層を除去することで改善することが確認された。
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