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2023 年度 実施状況報告書

減圧マイクロ波による農産物加工技術の開発:数理モデルによる最適処理条件の導出

研究課題

研究課題/領域番号 23KJ0079
研究機関岩手大学

研究代表者

倉田 大丞  岩手大学, 大学院連合農学研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2023-04-25 – 2025-03-31
キーワード減圧マイクロ波 / 濃縮 / 品質評価 / 農産物 / 予測モデル
研究実績の概要

減圧マイクロ波(VMW)処理をリンゴピューレの濃縮処理に適用し、L-アスコルビン酸や抗酸化能について評価した結果、以下の傾向が明らかになった。VMW処理によるリンゴピューレの濃縮過程で、圧力が上昇するにつれてL-アスコルビン酸の量が減少する傾向が見られた。特に、VMW処理中の試料温度は圧力に応じて増加し、3 kPaでは約40度、10 kPaでは約50度、20 kPaでは約60度にまで上昇した。これらの温度上昇は水の飽和蒸気圧曲線に従う挙動であった。加熱処理によって、L-アスコルビン酸が酸化型のデヒドロアスコルビン酸に分解され、処理中の試料温度上昇に伴いL-アスコルビン酸の量が減少することが推測された。一方で、ポリフェノール総量および抗酸化能を示すH-ORAC値は、圧力やマイクロ波出力の変動による影響が確認されなかった。これは、ポリフェノールが比較的熱に強い成分であるため、加熱による損失が少なかったことを示唆している。そのため、H-ORACの抗酸化能においても加熱による影響がほとんど観察されなかったと考えられる。
キャベツの遠赤外線乾燥における乾燥トレイ材質の違いが乾燥時間およびCO2排出量に与える影響を解析し、環境負荷を低減する観点から最適な乾燥トレイ材質を評価した。スチール製トレイ(ST)がポリプロピレン製トレイ(PP)よりも熱放射の影響が大きく、そのため乾燥時間が短縮されることが観察された。STを使用することでCO2排出量が約30%削減されることが示唆された。また、トレイ輸送および試料乾燥工程におけるCO2排出量が総CO2排出量の96%以上を占めることから、低環境負荷条件下でキャベツの乾燥を行うには、これらの工程におけるCO2排出量の削減が不可欠であると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

減圧マイクロ波処理を乾燥以外の加工方法として濃縮処理を選択し、リンゴピューレの濃縮へ適用した結果、処理中の試料温度に応じたL-アスコルビン酸量の変動が観察され、L-アスコルビン酸の熱分解時の温度依存性が確認された。圧力制御により、L-アスコルビン酸量の増加に寄与する可能性が見出された。また、キャベツの遠赤外線乾燥における乾燥トレイ材質の違いが乾燥時間に及ぼす影響を検証し、熱放射の影響が大きいトレイ材質の選択が乾燥時間や処理時間を短縮する重要な要因であることが示唆された。さらに、試料乾燥工程におけるCO2排出量が総CO2排出量の大部分を占めていることから、トレイ材質の選択が環境負荷の低減に寄与する可能性が考えられた。減圧マイクロ波技術の実用化に向けた課題の一つとして、乾燥以外の加工方法への適用やトレイ材質の選択による処理時間の短縮が示唆される結果が得られ、全体的には順調に進捗していると判断される。

今後の研究の推進方策

2023年度に引き続き、リンゴピューレの濃縮工程に減圧マイクロ波処理の適用し、理化学的特性の解析について検討を進める予定である。また、必要に応じて各品質評価項目について統計処理を行い、品質予測モデルの構築による複数の品質項目を考慮したVMWの最適化について検討を進める。

次年度使用額が生じた理由

本年度はリンゴを対象として減圧マイクロ波処理のよる濃縮処理を適用したが、他の農産物を対象とした実験を進めることができなかった。また、リンゴの収穫時期や市場に出回る種類の影響により、一定期間実験を予定通り進めることができない状況があった。本年度は他の農産物への実験を検討し、データの再解析も含め研究成果を取りまとめ、学術論文として取りまとめる作業を行う(Food Science and Technology Researchを予定)。これら研究成果の取りまとめおよび公表に関わる一連の取り組みにより、残りの研究費は全額執行見込みである。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Structural analysis of vacuum microwave dried shiitake mushrooms based on X-ray CT images and physical properties2024

    • 著者名/発表者名
      Kurata Daisuke、Orikasa Takahiro、Orikasa Yuki、Koide Shoji
    • 雑誌名

      Food Science and Technology Research

      巻: 30 ページ: 25~36

    • DOI

      10.3136/fstr.FSTR-D-23-00086

    • 査読あり
  • [雑誌論文] キャベツの遠赤外線乾燥における乾燥トレイ材質の違いが乾燥時間および乾燥過程におけるCO2 排出量に及ぼす影響2024

    • 著者名/発表者名
      倉田大丞, 折笠貴寛, 相馬海斗, 渡邊高志, 小出章二
    • 雑誌名

      農業食料工学会誌

      巻: 86 ページ: 1-11

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 減圧マイクロ波乾燥ショウガの辛味成分および抗酸化活性の評価2023

    • 著者名/発表者名
      折笠貴寛, 松本悠希, 倉田大丞, 小出章二
    • 雑誌名

      農業食料工学会東北支部報

      巻: 70 ページ: 7-12

  • [学会発表] 減圧マイクロ波処理を用いた濃縮リンゴピューレの品質評価2023

    • 著者名/発表者名
      倉田大丞, 小出章二, 折笠貴寛
    • 学会等名
      農業環境工学関連学会2023年合同大会
  • [学会発表] Application of vacuum microwave treatment to a concentration of apple puree2023

    • 著者名/発表者名
      Kurata, D., Orikasa, T., and Koide, S
    • 学会等名
      37th EFFoST International Conference 2023
    • 国際学会

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公開日: 2024-12-25  

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