研究課題/領域番号 |
23KJ0088
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
村井 開 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
|
キーワード | アクシオン / ダークマター / 重力波 / インフレーション |
研究実績の概要 |
本研究計画ではこれまでに、アクシオンを主なテーマとして素粒子論的宇宙論に関する複数の研究を実施・発表した。暗黒物質を説明するアクシオンの研究として、複数のアクシオンが時間発展するポテンシャルのもとで運動する模型を考え、特にインフレーション前後でのポテンシャルの変化に注目することによって、ストカスティックアクシオンと呼ばれる枠組みにおいて、アクシオンの存在量が大幅に増幅されるパラメータが存在することを示した。この結果は、従来のシナリオとは異なるパラメータ領域でアクシオンが全暗黒物質を構成しうることを意味している。 また、アクシオン暗黒物質についてのもう一つの研究として、アクシオンの質量が一次相転移によって変化する場合のアクシオン存在量について研究を行った。一次相転移の進行に伴って異なる相の境界面が運動することに着目し、特定のパラメータ領域においてアクシオンの存在量が二次相転移の場合よりも大きくなることを指摘するとともに、その見積りを先行研究よりも精密なものに改善した。加えて、本シナリオにおいてアクシオンの空間的な非一様性が生成されうることを示した。 さらに、近年大きな注目を集めている背景重力波について、その初期宇宙における生成機構に関する研究を行った。特にそのうちの一つは、アクシオンとゲージ場の結合に注目した研究であり、従来考えられてきたアクシオンとU(1)ゲージ場、あるいはアクシオンとSU(N)ゲージ場の結合を通じた重力波生成の模型が、超対称性の枠組みにおいて実現可能であることを指摘した。これは、これまで低エネルギー有効理論として考えられてきた模型に対して、高エネルギー理論の観点から妥当性を与えるものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アクシオンは素粒子論・宇宙論において様々な観点から注目を集める仮説上の粒子・場である。研究実績の概要に示したとおり、本研究課題ではこれまでに特に暗黒物質と原始重力波という複数の観点からアクシオンの研究を実施しており、順調に成果をあげている。
|
今後の研究の推進方策 |
以下の方針で研究を進める予定である。 (1)複数のアクシオンが存在する場合やポテンシャルが温度依存する場合に注目し、トポロジカル欠陥やアクシオン場のゆらぎの有無など様々な場合に対して、アクシオンが暗黒物質全体を構成するための条件を調べる。 (2)アクシオンとゲージ場の結合を通じて重力波を生成する機構について、より一般の模型に対して研究を進めるとともに、数値計算を用いてゲージ場からアクシオンに対する反作用の重要性を調べる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
旅費の高騰に伴い、一部物品の購入を控えたため残額が生じた。 この残額は、翌年度の旅費が計画当初に比べ高騰した分の補填に使用する計画である。
|