研究課題/領域番号 |
23KJ0091
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
依田 彬義 東北大学, 生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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キーワード | ストリゴラクトン / 進化 |
研究実績の概要 |
「陸上植物におけるストリゴラクトン(SL)のリン応答制御機構の起源」 種子植物においてリン酸欠乏により誘導される遺伝子発現の70%以上を制御するマスター転写因子としてPHOSPHATE STARVATION RESPONSE(PHR)転写因子が知られている。イネにおいてSL生合成のリン酸欠乏応答がOsPHR2により制御されていることが報告されており、PHRはコケ植物においても保存されているため陸上植物の共通祖先においてPHRによるSLのリン欠乏応答制御システムが構築されたと考えた。OsPHR2と相同性の高いフタバネゼニゴケのPHRホモログMpaPHR-like1 (MpaPHL1)、MpaPHL2を選び、機能解析を行なった。遺伝子発現解析の結果、リン酸欠乏によりMpaPHL1、MpaPHL2の発現が誘導されたため、それぞれの機能欠損変異体を作成した。現在、それら変異体を用いてSLのリン酸欠乏応答解析を行なっている。さらに、各遺伝子のプロモーター領域とCDS、レポーター遺伝子Citrineを融合したマーカー遺伝子を導入したフタバネゼニゴケを作成し、発現パターンとタンパク質の細胞内局在を調べている。 「AM菌共生シグナルとしてのSLの合成・分泌機構の原型」 フタバネゼニゴケにおいてSLがどこで合成されているのかを明らかにするため、SL生合成遺伝子のプロモーター:レポーターラインを作成した。蛍光観察の結果から、葉状体の基部腹側と仮根においてSL生合成遺伝子が発現していることを明らかにした。さらにSLがどこから分泌されているのかを明らかにするため、根寄生植物種子に対する発芽刺激活性を指標にSLの分泌部位を調べた。その結果、葉状体中肋の基部側からSLが分泌されていることがわかった。フタバネゼニゴケにおいてSLはAM菌共生シグナルとして土壌に近い基部腹側で生成・分泌されることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フタバネゼニゴケにおいてPHRホモログの機能欠損変異体およびマーカー系統を作成した。また、SL生合成遺伝子の発現パターンの解析や根寄生植物種子を用いた発芽刺激活性試験により、SLの生合成・分泌部位を明らかにした。おおむね計画通り進行している。
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今後の研究の推進方策 |
作成したMpaPHL1、MpaPHL2の変異体におけるSL関連遺伝子の発現変動を解析すると共に、BSBの内生量および分泌量をLC-MS/MSを用いて定量することでSLのリン欠乏応答がPHRの制御下にあるかを明らかにする。さらに、作成したマーカー系統を用いて発現パターンとタンパク質の細胞内局在を調べる。これらの解析により陸上植物におけるSLのリン応答制御機構の起源を明らかにする。
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