研究課題
本研究では、ヒ素超蓄積植物モエジマシダ(Pteris vittata)のヒ素ファイトレメディエーションの実用化に向けて、圃場環境におけるモエジマシダのヒ素吸収促進要因を明らかにすることを目的に実験を行った。実験では、ヒ素汚染圃場および非汚染圃場でモエジマシダを栽培した。栽培は6月から10 月にかけて実施し、栽培期間中は植物サンプルおよび植物根圏土壌を毎月1回の頻度でサンプリングした。得られた植物サンプルは、誘導結合プラズマ質量分析装置によりヒ素濃度を分析した。また、根圏土壌からは、蛍光X線分析装置、イオンクロマトグラフ、核磁気共鳴装置および次世代シーケンサーにより、それぞれ水溶性陰イオン、各種元素の全含有量、土壌中代謝産物、土壌中微生物についてのデータを取得した。これらの測定で得られたマルチオミクスデータは、機械学習により植物中ヒ素濃度に影響する変数とその重要度を算出した。さらに、重要度の高い変数を抽出したうえで、変数間の関係性はベイジアンネットワークにより可視化した。ベイジアンネットワークからは、土壌中硝酸イオン濃度の低下がモエジマシダのヒ素吸収の促進に寄与することが示唆された。土壌中硝酸イオン濃度はモエジマシダの乾燥重量には無関係であったことから、土壌中硝酸イオン濃度の低減は、モエジマシダの乾燥重要に影響することなく、ヒ素除去量の向上に寄与すると考えられた。本研究では、マルチオミクスデータとデータサイエンス手法を活用することにより環境―生物間の相互作用を可視化し、生物学的ヒ素除去プロセスの効率化につながる要因を明らかにした。
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Science of The Total Environment
巻: 899 ページ: 165654~165654
10.1016/j.scitotenv.2023.165654