研究課題/領域番号 |
23KJ0187
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
三島 祐悟 東北大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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キーワード | 神経変性疾患 / 標的タンパク質分解 / PROTAC / TPD |
研究実績の概要 |
アルツハイマー病やパーキンソン病をはじめとする神経変性疾患は、神経細胞に特定の変性タンパク質が凝集・蓄積することが原因と考えられており、これらの疾患の根本的治療は未だに確立されていない。本研究では神経変性疾患の根本的治療に向けて、低分子化合物を用いた新たな標的タンパク質分解法を確立し、PROTACなどの既存の標的タンパク質分解薬では分解が困難であった凝集性の神経変性疾患原因タンパク質を高効率に分解することを目的としている。 令和5(2023)年度は研究の第一段階として、本手法が細胞内の標的タンパク質を実際に分解させられるか検証する概念実証を実施した。まずは凝集タンパク質よりも分解されやすいと考えられるタンパク質を標的として複数の分解薬を設計・合成し、これらにより細胞内の標的タンパク質を分解することに成功した。これらの分解薬の作用機序解析も実施し、仮説通りの機序で分解されていると推定できる結果を得た。現在は次の段階として、神経変性疾患の原因となる凝集タンパク質に本手法を応用すべく、凝集タンパク質を標的とした分解薬の合成を行っている。 また本研究の過程で、既知の低分子化合物YM-1ががん関連タンパク質BRD4の分解を誘導することを発見した。YM-1はがん細胞の増殖を抑制する活性を持つことが知られているが、そのメカニズムは詳細に解明されていなかった。今回の発見はYM-1の活性の一端を解明するものであるとして学会および論文にて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、本手法の概念実証を令和5年度中に完了し、凝集タンパク質への応用についても化合物の合成と評価系の構築ともに着実に進行しているため。
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今後の研究の推進方策 |
凝集タンパク質に対する分解薬の合成を行う。また、並行して神経変性疾患の原因タンパク質であるα-シヌクレインやタウ、変異ハンチンチンなどが細胞内で凝集体を形成するような条件を検討し、評価系を構築する。分解薬の合成と評価系の構築が完了し次第、分解薬の活性評価および作用機序解析を実施する。さらに、より強い活性や高い脳移行性をもつよう分解薬の構造展開を行う。
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