研究実績の概要 |
本年度 (2023年度) は、コバルト触媒を用いたアルキンのヒドロアリール化重付加におけるモノマー適用範囲を拡張し、精密重合へと展開することを目指して研究を行った。 申請時点から採用までの準備段階において、アミド配向基を導入したビチオフェンモノマーのヒドロアリール化重付加を実現し、様々な光電子特性を有するポリアリーレンビニレン (PAVs) の合成手法を確立した。本成果は、Macromolecules誌への論文投稿と国際会議における研究発表を通して世界へ発信した (R. Iwamori, et al., Macromolecules 2023, 56, 5407-5414.)。この知見を活かして、チオフェンモノマーにアミド配向基と末端アルキンを導入したABモノマーを設計し、開始末端を導入したコバルト錯体を重合開始剤としてABモノマーの重合反応を行った。その結果、開始末端が導入されたポリチエニレンビニレンの生成を確認した。 続いて、アミドチオフェンの間に種々の機能性ユニットを導入したC-Hモノマーを設計し、エチニルチオフェンを反応点とするジインモノマーとの重合により、狭いバンドギャップを有するPAVsを合成した。アミドチオフェンの間に電子不足なベンゾチアジアゾールユニットを導入した場合に最も狭いバンドギャップを示し、近赤外領域の波長の光を吸収するPAVsの合成に成功した。さらに、配向基とコバルト触媒の強い相互作用に着目し、芳香族六員環化合物であるナフタレンやカルバゾールのヒドロアリール化重付加を30 ℃という温和な条件下で進行させることに成功した。また、重水素化試験やDFT計算、単結晶X線構造解析を用いることで、配向基の種類及び導入位置といったモノマー構造の設計指針を確立した。
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