研究課題/領域番号 |
23KJ0245
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
岡崎 実那子 筑波大学, 人間総合科学学術院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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キーワード | 呼吸 / 呼吸中枢 / 硫化水素 / 神経伝達調節因子 / 中枢パターン生成器 |
研究実績の概要 |
呼吸の律動的な動きは、延髄に位置する呼吸中枢の神経細胞が互いに興奮/抑制しあうことで作られている。しかし、特定の呼吸相で発火する多様な神経細胞が、どのように安定した呼吸運動を生み出すのか、その神経回路の全容は未だ明らかではない。本研究では、神経細胞同士の伝達効率を調節する生体ガスである硫化水素に着目して、呼吸運動の安定性を生み出す神経回路の全容解明に迫ることを目的とした。 ラットの経血管灌流標本において、硫化水素の合成阻害剤を呼吸中枢内の限られた領域に微量局所投与し、硫化水素の合成量が減少した際の呼吸運動の変化を捉えた。その結果、呼吸中枢の硫化水素の合成が抑制されると、呼吸のリズムや強さ、安定性などが乱れること、これらの変化は硫化水素の合成を阻害する領域ごとに異なることが明らかになった。これらの結果は、呼吸中枢内の硫化水素が呼吸運動の安定性に重要な役割を持つこと、その役割は領域依存的であることを示唆している。加えて、興奮性または抑制性の神経伝達の阻害薬を呼吸中枢内に微量投与した際の呼吸運動の変化との比較をした。これにより、呼吸中枢で合成されている硫化水素は、興奮性および抑制性の神経伝達を調節することを介して、安定した呼吸運動を生み出す神経回路に寄与していることが示唆された。 さらに、高密度多点電極を用いて、呼吸中枢の多数の神経細胞の活動を同時記録することができた。これにより、呼吸中枢で合成されている硫化水素によって、呼吸中枢の神経細胞の活動がどのように調整されているかを捉えることが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
呼吸中枢の硫化水素が、呼吸運動の安定性に重要なことが明らかになったとともに、多数の呼吸中枢の神経細胞の活動を同時記録することに成功したため。
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今後の研究の推進方策 |
高密度多点電極を用いて、呼吸中枢の多数の神経細胞の活動を同時記録し、機械学習による自動解析ソフトを利用して、個々の神経細胞の活動に分離および分類する。これによって、呼吸中枢の個々の神経細胞の活動パターンと、それらによって構成されている神経ネットワークを捉える。さらに、脳内で合成されている硫化水素が、呼吸中枢の個々の神経細胞の活動と神経ネットワークに対して、どのように機能しているのかを明らかにする。
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