研究課題/領域番号 |
23KJ0265
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
鳥居 万椰 筑波大学, 人間総合科学学術院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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キーワード | 看護理工学 / 大規模言語モデル / 膣圧測定 / ウェアラブルヘルスケア / 医工連携 |
研究実績の概要 |
本研究では、骨盤底筋の解明とその健康維持・向上に寄与する新たな知見と技術の創出を目的とし、膣圧測定デバイスや膣圧シミュレーターの開発に取り組んでいる。申請書に記載した研究目的は、1) 検証を簡単かつ定量的に行える、膣挿入型フェムテック開発に特化した「女性の通常状態の膣運動を再現する膣運動シミュレーター」の開発・検証、2) 日常動作における膣の運動が計測できるポータブルなデバイスを制作し、骨盤底障害の治療やメカニズム解明及びフェムテックへの応用を視野に日常での膣運動や動作と膣圧の関係を明らかにすることである。 申請書に記載した課題である、従来の検証手法である着用しての計測は、膣挿入を伴う実験であるため侵襲性が高く、被験者に高負担であるという点に対して、2023年度は大規模言語モデル(LLM)分野の知見を応用し、「Lottery and Sprint」というデザイン手法を提案した。この手法は、プロダクトデザインや形状の設計などに応用可能であり、本研究課題である膣圧測定デバイスや膣圧シミュレーターのデザインにも活用できると考えられる。「Lottery and Sprint」を用いることで、被験者実験が容易ではない膣圧測定デバイスや膣圧シミュレーターの設計を効率的に行うことができ、本研究の目的達成に大きく貢献するものである。 また、看護理工学分野の学際的なコミュニティーへの参加を通じて、看護学と理工学の相互理解を深めることができた。 今後は、申請書に記載した研究実施計画に基づき、膣運動シミュレーターの制作と検証、ポータブル膣圧測定デバイスの制作を進め、骨盤底筋の解明とその健康維持・向上に寄与する新たな知見と技術の創出を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、大規模言語モデル(LLM)分野の知見を本研究課題に取り入れる過程で、新たな研究テーマが生まれた。LLMを用いて人間のデザインやクリエーションをサポートする方法を模索した「Lottery and Sprint」は、プロダクトデザインや形状の設計などのデザイン手法の一つとしての発展が期待されている。本課題では、膣挿入型ウェアラブルアイテムの被験者実験を代替する高速で定量的な評価が可能な膣シミュレーターの制作・検証から始め、それを用いたポータブル膣圧測定デバイスの開発・検証を行う。さらに、常時モニタリングが可能な膣圧測定デバイスをウェアラブルヘルスケアとして発展させ、骨盤底障がいの治療法・診断法・メカニズムの解明を目指す。 また、本研究課題が属する分野である看護理工学の学際的なコミュニティーへの参加も積極的に行った。看護理工学第5回ものづくり体験ワークショップでは、看護学と理工学の研究者が相互理解を深める場として、グループワークでのプロトタイプ制作(アイデア提案)を行い、異分野理解の貴重な機会となった。 これらの活動を通じて、本研究課題の発展に寄与する新たな知見やアプローチを得ることができた
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今後の研究の推進方策 |
「Lottery and Sprint」で提案されたデザイン手法は、本研究課題である膣圧測定デバイスのデバイス設計やデザイン、ユーザーエクスペリエンスのデザインにも応用可能であると考えられるため、これを応用して被験者実験が容易ではない膣圧測定デバイスや膣圧シミュレーターの設計を行なっていく。 今後は、看護理工学分野の専門家の知見を活かしながら、骨盤底筋の解明に向けて具体的なプロトタイプの作成と提案を目標とする。特に、申請書では情報学的アプローチを重視した膣圧シミュレーターを提案していたが、今後はより看護学の重視する罹患者の視点を取り入れることで協力者を得て研究を進めるアプローチを目指したいと思う。このような学際的な取り組みを通じて、骨盤底筋の解明とその健康維持・向上に寄与する新たな知見と技術の創出を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題では、当初の予算計画から515,639円の余剰が生じた。この主な理由は、研究を進める過程で、当初予定していた実験の一部を変更、延期したことに加え、新たな技術の登場により、研究の効率化が図れたことにある。 具体的には、形状記憶合金の購入見送り、耐水試験機の購入延期、曲げ試験機のレンタルへの変更などにより、材料費や機器購入費を削減することができた。また、実験準備が整わなかったことから、被験者実験(産科医・助産師)を十分に行えなかったことも研究費の余剰につながった。 一方、研究期間中に大規模言語モデル(LLM)が登場し、研究の効率化に大きく貢献した。LLMを活用することで、実験設備を整える費用よりも安価で研究を進められたことも、研究費の余剰につながっている。 これらの変更や延期、新技術の活用により、研究費を当初の予算よりも515,639円の余剰が生じた。次年度は次年度は雑誌論文投稿費や学会発表費、ハードウェアの実装や大規模言語処理(LLM)の使用により必要になる計算機資源の調達に使用する。
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