研究課題/領域番号 |
23KJ0298
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
三木 健矢 埼玉大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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キーワード | 超伝導 / ボゴリウボフ・フェルミ面 / 鉄系超伝導体 |
研究実績の概要 |
通常の超伝導体はフェルミ準位にギャップを持つ一方、超伝導状態にもかかわらずフェルミ面を持つ超伝導(ボゴリウボフ・フェルミ面)が提案されている。ボゴリウボフ・フェルミ面を構成する準粒子は通常の金属のフェルミ面を構成する電子とは異なる性質を持つと考えられる。本研究は、相互作用や不純物効果を取り入れることで、構成粒子の性質を反映したボゴリウボフ・フェルミ面に特有な物性を解明することが目的である。
これまでに、バルクのボゴリウボフ・フェルミ面に特有の定性的な性質を、フェルミ面を構成する準粒子の、低エネルギーの性質を抽出したモデルに基づいて調べた。その結果、純粋な奇周波数ペアという特殊なクーパーペアが準粒子の描像で誘起されることを明らかにした。
本年度は、実験との比較のためにより定量的な評価を行なった。現実物質であるFe(Se,S)に基づいた解析を行い、特に低温・低エネルギーで支配的な不純物効果を調べた。具体的には、常伝導状態のハミルトニアンに第一原理計算から得られたFeSeのタイトバインディングパラメータを用いた数値計算により、状態密度などの熱力学量を評価した。さらに、不純物の種類を磁性・非磁性、その磁性の異方性など、パラメータを変えた計算を行うことで、電子のパラメータと準粒子の奇周波数ペアとの関係性を明らかにした。このFe(Se,S)に基づく解析により、熱力学量の定量評価だけでなく、これまでの準粒子モデルの妥当性も検証することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現実物質のFe(Se,S)に基づき現実的なパラメータで数値計算による解析を行うことで、熱力学量の定量的な評価だけでなく、準粒子モデルの妥当性も検証することができた。準粒子モデルを用いた超伝導界面の性質の研究に発展させることができ、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
ボゴリウボフ・フェルミ面を持つ超伝導体の界面に現れる特殊な準粒子状態の解析を行う。通常の超伝導界面の計算にも用いられるマクミラングリーン関数法を準粒子モデルに応用することで、局所状態密度や界面で誘起されるペアの性質を調べる。この解析により、超伝導体界面で空間反転対称性が破れることによる準粒子の新たな物性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に国際会議の発表が決定している。開催地がイタリアと遠方のため今年度よりも旅費が必要であり、この旅費捻出のためである。また、今年度の解析を通して第一原理計算の手法を身につけた。次年度以降にその技術を活用していく予定である。しかし、現在使用しているハードディスクでは容量が足りなくなる恐れがあるため、購入予定である。さらに、今年度も購入したOverleafやAdobeのソフトウェアのサブスクリプションを継続し、論文執筆の環境を引き続き整備する。
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