研究課題/領域番号 |
23KJ0300
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
八田 良樹 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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キーワード | 太陽型星内部差動回転 |
研究実績の概要 |
当該年度は主に、1. 太陽型星の三次元熱対流数値計算に対する星震学的パラメタの評価、および、2. ベイズ推定に基づく逆問題スキームの開発、以上の二点に取り組んだ。以下、順に詳述する。 1. 太陽型星の三次元熱対流数値計算に対する星震学的パラメタの評価 現在までに観測されている太陽型星の差動回転(Benomar+2018など)を解釈することを念頭に、受け入れ教員である堀田教授が行った太陽型星の三次元熱対流数値計算の結果(特に内部差動回転分布)に対し、星震学的パラメタであるa係数(恒星内部自転角速度の指標)を計算した。その結果、堀田教授が行った理論計算とBenomar+2018の観測結果との間に大きな矛盾は見られなかった。また、解析過程において、表層付近の自転勾配層がa係数に無視できない影響を与えていることも見出した。Benomar+2018では「表層付近の自転勾配層」は特に注目されていなかったので、次年度以降その点も考慮に入れた上で恒星内部差動回転推定を行う。 2. ベイズ推定に基づく逆問題スキームの開発 恒星内部差動回転推定を行うためのベイズ的逆問題スキームの開発に取り組んでいる。開発にあたってはHatta+2022の定式化を利用した。恒星内部差動回転のモデル化においては、当初の計画通り「内層・外層の平均的な自転角速度」、「内層・外層の自転角速度の緯度依存性」、「内層と外層の境界位置」の五つのパラメタを用いた。一方で、前述の「1. 太陽型星の三次元熱対流数値計算に対する星震学的パラメタの評価」から、外層表層における自転角速度勾配を無視できない可能性を見出したため、今後は「自転角速度の表面勾配層」も考慮に入れたモデル化に発展させることを予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の第一の目標は、恒星内部の差動回転推定を行うためのベイズ的逆問題スキームを確立することであり、その目標は九割ほど達することができているから。研究計画記載の「PLATO探査機の将来データを見据えたfeasibility test」はまだ行えていないが、その際必要な太陽型星の恒星進化計算の準備も進みつつあるため、次年度(2024年度)には遂行可能な見込みである。 また、当初は計画していなかった「太陽型星の三次元熱対流数値計算に対する星震学的パラメタの評価」に取り組めた点も評価に値すると考えられる。受入研究室と自身の強みを生かした研究であり、本研究課題の進捗に影響を与えない範囲で今後も同様の研究を続けていく。 学会等における成果発表も行えており、総じて本研究課題の進捗状況は順調であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
基本的に、当初想定していた研究計画に則って研究を進めていく。まず、本年度中の早い段階で「PLATO探査機の将来データを見据えたfeasibility test」を行う。ここで必要となるベイズ的逆問題コードと恒星進化モデルは大方揃っているので、早急に取り掛かる。 以上に並行して、Benomar+2018で用いられたデータの取得を行う。既に、筆頭著者であるOthman Benomar氏とはコンタクトをとっており、データをいただける運びとなっている。本年度前半にはデータを整理しておき、後半にかけて差動回転推定に取り掛かる。 差動回転推定を行うにあたっては、マックスプランク太陽系研究所(ドイツ)を訪問し、差動回転推定のエキスパートであるLaurent Gizon所長らと議論を交えながら研究を進める。渡航期間は一年を予定している。既に、Laurent氏の了承は得られており、渡独の準備を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
受入研究室の計算機・計算環境が非常に充実しており、当初予定していたよりも物品購入を控えたため。 当該年度に生じた「次年度使用額」は、2024年度中に行う予定である海外渡航における旅費などとして使用する予定。
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