研究課題/領域番号 |
23KJ0315
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
河野 美優香 千葉大学, 融合理工学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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キーワード | 銀析出 / 樹状晶 / ホウケイ酸ガラス / 固体イオン交換 / フェムト秒レーザ |
研究実績の概要 |
研究は,ガラスの中での銀の晶出現象について,ガラス内微細配線や穴あけなどの工業応用に向けて,メカニズム解明および形状の制御を目指すものである.ガラス内銀析出物は銀イオンを添加した領域のみで発生するため,銀イオン添加領域の形状を操作することは析出物の形状を制御することにつながると考えた.そこで,銀イオン添加のみを施したホウケイ酸ガラスに対して高繰り返し周波数のフェムト秒レーザを照射することで,ガラス内の元素分布を操作し,銀イオン添加領域の形状を添加後から操作する手法を新規に試みた. 1)高繰り返し周波数のフェムト秒レーザ照射により,ガラス内に熱が蓄積する.その影響により,銀イオンは環状に濃度の高い領域を形成した.また,焦点近傍ではケイ素と酸素の濃度が高い領域が形成された. 2)イオン添加領域と未添加領域にまたがるようにフェムト秒レーザを走査したところ,上記の現象により,銀イオンが未添加領域まで拡散した.したがって,ガラス内での銀イオン含有部分の形状を操作できたと言える. 3)元素分布形状の偏光による影響も調査した.直線偏光の場合,焦点付近では銀イオンはほとんど検出されなかった.一方,アジマス偏光,ラジアル偏光の場合では,焦点近傍でもわずかに銀イオンが検出された. これらより,銀イオン添加ガラスにフェムト秒レーザを照射したところ,銀イオンの分布形状を変えられることがわかった.さらに,濃度勾配を有した領域を形成することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度の活動は,主に研究留学先でおこなった.受入先はフェムト秒レーザによる透明材料の加工が盛んな研究室であった.そのため,当初の計画にはなかった項目を追加して取り組んだため,当初の計画からはやや遅れているという自己評価を付けた.
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今後の研究の推進方策 |
前年度の研究内容を銀析出現象に応用することを目指し,銀イオン濃度が銀析出現象に与える影響を調査する.そのうえで,銀イオンの分布形状を変えた試料ガラスに対して銀析出処理を施し,銀イオンの濃度分布が銀析出物の形状に与える影響を評価する. また,銀析出物形状の温度場による影響を明らかにする.レーザによる局所加熱や雰囲気内の温度の調整による,銀析出物の成長速度,形状の影響を調査する.さらに,銀析出物処理のあとにレーザを照射することで,ガラス内の銀析出物自体が加熱によって受ける影響を調査する.
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度は主に研究留学先の機器や光学部品を使用させていただくことができたので,現在は所属機関で使用する光学部品の要求仕様を検討中である.2024年度は,これらの費用で要求仕様に合う光学部品や必要な消耗品を購入する予定である.
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