研究課題/領域番号 |
23KJ0353
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小室 仁 東京大学, 医学系研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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キーワード | 心不全 / 心臓線維芽細胞 |
研究実績の概要 |
申請者はscRNA-seqにて心臓線維芽細胞の遺伝子発現パターンには不均一性があり、6つのサブタイプに細かく分類できることがわかった。このサブタイプの中から心不全期特異的に出現する線維芽細胞集団に着目し、Heart Failure(HF) fibroblastと定義した。HF fibroblast群は線維芽細胞集団の中で転写因子c-Mycを特異的に発現していた。続いて、心臓線維芽細胞特異的c-Myc欠失マウスと心臓線維芽細胞特異的c-Myc過剰発現マウスを作成した。野生型(WT)マウス、心臓線維芽細胞特異的c-Myc 欠失(KO)マウス、心臓線維芽細胞特異的c-Myc過剰発現 (OE)マウスに大動脈縮窄術(TAC)を施して圧負荷による心不全を誘導したところ、WTマウスに比較してOEマウスにおいて心機能の低下が顕著となり、逆にKOマウスでは心機能の低下が抑制された。次に、成獣マウスの心臓線維芽細胞においてレトロウイルスベクターを用いてc-Mycを過剰発現させてその培養上清を培養心筋細胞に添加したところ心不全マーカーの上昇が認められた。以上の結果から、HF fibroblastにおいてc-Mycにより発現上昇したなんらかの液性因子が心筋細胞に作用した可能性が示唆された。そこでWTマウスのshamマウスとTACマウス、KOマウスの心臓でRNA-seqを行い、そのデータとscRNA-seqのデータからHF fibroblastでCxcl1というケモカインが発現上昇していることを見出し、Cxcl1の特異的受容体であるCxcr2が心筋細胞に発現していることも確認した。最終的にはCxcr2の中和抗体をTACマウスに投与し心不全が抑制されることを示し、心臓線維芽細胞がc-Myc-Cxcl1-Cxcr2経路を介して心筋細胞に直接作用して心不全の病態に関与していることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、心臓線維芽細胞がどのようにして心不全の病態に関与しているかを解明し、仮説通り、実際に作用している液性因子を見出すことができた。しかし、液性因子以外にもmiRNAの存在も検証したが、こちらはいまだに良いmiRNAを発見には至れていない。
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今後の研究の推進方策 |
今回、心臓線維芽細胞からCxcl1というケモカインが分泌され心不全の病態に関連していることがわかったので、このケモカインが他臓器にどのように影響しているかを検証していく。また、miRNAも引き続き探索する予定である。 また、ヒトの心不全時にCxcl1が血中で上昇していることは知られているので、臨床情報と統合し、治療反応性、予後予測の新たなバイオマーカーになる可能性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予備実験で想定した結果が出なかったため、当初予定していた外部委託の解析などが行えなかったため。
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