研究実績の概要 |
メタンと酸素からメタノールやホルムアルデヒド、エタン、エチレンなど有用化合物を選択的に直接合成する触媒反応系開発に取り組んだ。本研究では高いメタン転化率と生成物選択率を同時に実現するために、高温低圧 (600 ℃, 常圧) および低温高圧 (400 ℃, 6 MPa) の二つの反応条件で固体触媒を開発した。 高温低圧条件では担持酸化鉄サブナノクラスター触媒に着目し、多核鉄クラスターを内包するポリオキソメタレート (POM) を前駆体とした触媒が、ホルムアルデヒドを選択的に生成することを見出した。またPOMを構成する酸化タングステンが酸化鉄クラスターの凝集を抑制することで高い熱安定性を実現していることを明らかにした。さらにラマン分析やX線微細構造解析をはじめとする多様な分析手段を用いて、POM前駆体がメタン酸化活性に与える影響およびシリカ担体が高いホルムアルデヒド選択率を示す機構を明らかにした。本研究成果に関して、Catalysis Science & Technology誌に論文が受理された。 また低温高圧条件では、タングステン酸ナトリウムをシリカ上に担持した触媒でメタンの酸化カップリング (OCM) が効率的に進行し、メタン転化率8.8%においてC2またはC3炭化水素が選択率44%で得られることを見出した。また反応条件や触媒層温度に関する検討を行ったところ、本反応系は気相でメタンが活性化され、触媒によって選択率が制御される新しい反応系であることが示された。さらに触媒は触媒層温度の上昇とメタノールから炭化水素への選択率制御の二つの役割を持つことを明らかにした。本研究成果に関して、Journal of the Japan Petroleum Institute誌に論文が受理された。
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