暗黒物質の正体解明は標準模型を超える新物理の最重要な課題であり、その最も有力な候補が熱的暗黒物質である。その内、電弱スケール程度の質量を持つものは特にWIMPと呼ばれ、現在まで盛んに探索されてきた。しかし、発見に至っておらず、近年はWIMP以外の熱的暗黒物質に注目が集まっている。特に、軽い熱的暗黒物質はこれの探索を目的とした実験が多数計画されている状況にある。これら実験の内、最も発展中の分野が間接探索である。軽い熱的暗黒物質はMeV程度のエネルギーを持つガンマ線を放出し得るが、これは検出が困難であることが知られている。しかし、近年困難が克服され、私がメンバーとして参加する次世代MeVガンマ線観測衛星COSIがNASAの次期打ち上げ計画に採択された。故に、私は今年度は軽い熱的暗黒物質のCOSIによる探索可能性について研究を行った。まずは「singletスカラーである暗黒物質と媒介粒子の模型」について様々な学会で発表を行った。そして、COSIのメンバーと議論を行うことで、この研究を発展させる指針を立てた。その結果、繰り込み可能性と最小性の観点から軽い熱的暗黒物質の許される模型を初めて分類した。そして、そのすべての模型に対し様々な観測や実験から得られる制限を包括的に解析することで、現在許されているパラメータ領域を明らかにした。また、COSIがそのほぼすべての領域を効率的に探査し得ることを示した。これについても様々な学会で発表を行い、現在は本研究を申請者を第一著者にしたCOSIグループの論文としてまとめている最中である。
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