研究実績の概要 |
本研究は「金属中心を周期配列した原子層ナノ分子の設計・合成」と題し,数ナノメートルサイズのナノカーボン骨格に金属錯体が周期的に配置された構造を持つナノカーボン分子錯体の開拓を行う.研究初年度である2023年度は,新奇π系・金属化合物の化学を開拓する上で基盤となる技術の開発と,目的化合物の合成を進めた.まず,化合物の効率的な収率向上手法の開拓として,実験計画法と機械学習を組み合わせた手法のさらなる開発を行った.これまでに実験計画法により,効率的にパラメーター空間を網羅して実験データを集め,さらに機械学習によってデータを補間することで,最小限の実験で最適な条件を見つけ出す手法を報告している (Ikemoto, K.; Akiyoshi, M.; Mio, T.; Nishioka, K.; Sato, S.; Isobe, H. Angew. Chem. Int. Ed. 2022, 61, e202204035.).しかしながら,一般的にデータ量を拡張するために新たに実験計画法に従った条件を再設定する必要があり,多くのデータを集め直さなくてはならない.そこで,さらなる展開として,実験計画法をベースとした新たなデータ拡張手法を開発した.これらの研究成果は国内の学会にて一部発表を行なった.また,上記の化合物の効率的な収率向上手法を用いて,巨大π系を有するナノカーボン分子錯体の合成を行なった.種々のカップリング反応を用いて12工程の反応を行い,分子量1500を超える鍵中間体の合成を達成した.
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