研究課題/領域番号 |
23KJ0496
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮園 健太郎 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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キーワード | 海洋プラスチックごみ / Plastisphere / アンプリコンシーケンス解析 |
研究実績の概要 |
日本近海の海洋プラスチックごみの1949年から2020年の汚染過程に関して追加の試料解析を行った。その結果、海洋プラスチックごみの汚染過程は個数・重量ともに最初に出現した1952年から1970年代までの増加期、1980年代から2010年代初期までの停滞期、2014年以降の再増加期の3つのフェーズに分けられることが分かり、その際プラスチックの平均サイズの小型化が進行し、細分化とMPの増加が進行していることが示された。この結果に関しては現在論文として国際学会誌に投稿準備を進めている。 また、まだ研究例のない日本近海のプラスチック(MP)の付着生物相を明らかにするために、2023年7月に本州南方、黒潮から亜熱帯海域における調査航海で海洋表層からMPを採集し解析した。高精細デジタル顕微鏡による観察と抽出したDNAのアンプリコンシーケンス解析を行った結果、測点ごとに優占する真核生物が異なることが分かったが。一方で原核生物は特定の種が測点で優占することはなかったが、Roseobacter属のTateyamaria omphalii及び未分類のErithrobacter属2種、メチル栄養細菌のHyphomonadaceae属1種がほぼすべてのMPから検出された。Chao指数に基づくNMDS解析は、真核生物は測点ごとに異なった生物相を形成し、MPのサイズが有意に影響していることが分かった。原核生物は測点ごとの明確な生物相の違いは見られなかったが、真核生物同様、MPのサイズが有意に影響していることを示した。サイズが大きいMPほど苔虫動物門Biflustra sp.や付着性シアノバクテリアが多い一方で、小さいほど刺胞動物のNanomia bijugaやプロテオバクテリアが多いことが分かった。 この結果は海洋生物シンポジウムにて口頭発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
日本近海の海洋プラスチックごみ汚染過程の変動をより詳細に明らかにするために未解析の年の海洋プラスチックごみのデータを穴埋めするため、過去試料の追加調査をする必要があった。また、その過程で太平洋十年規模振動や堆積物中のクロロフィルの長期変動との比較検証を行う必要が生じた。 論文投稿に当たり解析と執筆に予定より時間をかけてしまった。 また、ホルマリン固定された過去のプラスチックごみサンプルからDNAを抽出を計画していたが、既存のホルマリン固定サンプル用抽出キットによる抽出とその後のPCRの結果に課題があり、抽出における条件を変更し抽出と増幅の効率化するための検証が必要となった。
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今後の研究の推進方策 |
8月に複数の調査航海に参加することで追加の海洋プラスチックごみを採集する。現在のPlastisphereの分布を広域で把握することに努め、現在のPlastisphereに顕在している生物を決定することを目指す。 また並行して過去のプラスチックサンプルに関しては顕微鏡観察により、各年代のPlastisphereの記録とデータ蓄積を行い、年代ごとのPlastisphereの傾向を把握し、現在のPlastisphereの主要生物をターゲットとして出現頻度や付着度合いの年代変遷を行う。 この際、比較的新しい年代のプラスチックサンプルに関してはホルマリン固定サンプル用のDNA抽出も試み、アンプリコンシーケンス解析による検出も試み、顕微鏡観察の結果との照合を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
必要な物品・経費は生じていたが、次年度使用額に当たる残高では不足していたため、所属研究室内の予算で賄うことになった。次年度でアンプリコンシーケンス解析を実施する予定だが、もともと消耗品や外注費用が高額であるため、次年度使用額を合わせて使用する。
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