研究課題/領域番号 |
23KJ0579
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
彦根 悠人 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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キーワード | ダフナンジテルペン / 網羅的全合成 / 天然物 / 連続不斉中心 / オルトエステル / 酸素官能基 |
研究実績の概要 |
ダフナンジテルペンは、トウダイグサ科やジンチョウゲ科の植物から単離されている天然物群であり、高い薬理活性を示す天然物が多数報告されている。本天然物はトランス5/7/6員環(ABC環)上に多数の酸素官能基と7つ以上の連続不斉中心、および特異なオルトエステルを有する極めて複雑な化学構造を持つ。当研究室は効率的な三環性骨格の構築法を報告している。申請者は本戦略を基盤とし、さらなる官能基化を行うことで効率的に高酸化度ダフナンジテルペン類を全合成できると考え、抗HIV活性を示すダフネトキシンの合成研究に着手した。 本研究ではB環上に存在するエポキシドの構築が課題である。この解決に向け複数の基質を合成した。まず、既知の三環性合成中間体に対して酢酸オルトエステルを導入した。続いてB環の酸素官能基化を行った。B環上のアルケンを一重項酸素で位置・立体選択的に酸化し、アリルアルコールを合成した。得られたアリルアルコールから立体選択的にエポキシアルコールを導いたのち、エポキシドの開環を行い、既存の官能基を損なうことなく所望のアリルアルコールを立体特異的に合成した。最後に、天然物が有する立体的に遮蔽されたエポキシドの導入に向けて、得られたアリルアルコールを、B環周りの立体障害が異なる複数の誘導体へ導いた。 以上より、申請者はエポキシドを導入するための前駆体を複数合成した。今後、これらの基質からエポキシドの構築を行うことでB環の酸素官能基化を完了させ、ダフネトキシンを含む高酸化度ダフナンジテルペンの網羅的全合成へとつなげる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者が、現在までの研究の進捗状況をおおむね順調と判断した理由は、以下のとおりである。 ・A/C環の官能基を損なうことなく、B環を選択的に酸素官能基化することができた。 官能基直交性に優れた反応を合理的な順番で組み合わせることで、高度に酸素官能基化された基質に対しても穏和な条件でさらなる酸素官能基化を実現した。これにより、天然物が有するエポキシドの構築に向けた複数の誘導体を合成することが可能となった。また、Lewis塩基性を示す多数の酸素官能基を有する基質に対して、エポキシドを化学選択的に活性化するLewis酸を見出し、新たなエポキシ化戦略を実現しうる合成中間体を得ることに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
天然物が有するエポキシドの導入に向けて、異なる反応機構に基づくエポキシ化を検討するために必要な基質の合成を完了した。今後はこれらの基質を用いて、立体的に遮蔽されたエポキシドの導入を行うことで、ダフナンジテルペン類に共通するB環構造の酸素官能基化が完了する。エポキシ化を実現した後、天然物に対応するオルトエステルの導入やマクロ環の構築を行うことで、高酸化度ダフナンジテルペン類を網羅的に全合成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
反応条件の最適化や試薬の購入先の変更によって、実験に必要な費用を抑制できた。次年度は、基質の大量合成や微小量サンプルの測定等を予定しており、次年度使用額をそれらに要する費用に充当する。
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