研究実績の概要 |
1年目の目標に掲げた「ナノ磁性体中のマグノンに対する状態トモグラフィ法の開拓」に成功し、2年目の目標である「マグノン非線形ゆらぎの観測」に対してもすでに実験を進めている。 本研究は従来見過ごされてきた磁化の振幅・位相間の相関を用いることで、これまで欠如していたマグノン高次相関を調べる手法(磁化状態トモグラフィ法)を開発し、新たなスピントロニクス物性研究の領域を切り開くものである。その第一目標として本研究の根幹を担う測定法の開発(「ナノ磁性体中のマグノンに対する状態トモグラフィ法の開拓」)を掲げた。磁化ダイナミクスの電気的抽出を行うACスピンポンピングとボックスカー積分器を用いた高速ロックイン測定を行うことで、時間・周波数についても高精度に振幅・位相間の相関を取得する方法を確立した。さらに磁化の非線形励起を行うことで緩和時の位相情報が桁違いにのびるpersistent coherence現象に本手法を適応することで、その背景物理の解明を行った。本結果は査読付き論文として出版された[1]。 また、2年目の目標として、開発した測定手法を用いた「マグノン非線形ゆらぎの観測」を掲げた。磁化を非線形励起する際の時間発達過程では、磁化の非線形相互作用に由来した、磁化の非線形相関生成の可能性がある。そこで、時間分解測定可能なように拡張したトモグラフィ測定系を用いて、磁化のゆらぎを測定した。得られたゆらぎに対し、確率微分方程式に基づいたマグノンの位相空間上の運動方程式であるLangevin方程式を用いた数値計算により、その背景物理の解明を行っている。 [1] T Makiuchi, T Hioki, H Shimizu, et al., Persistent magnetic coherence in magnets. Nat. Mater. (2024)
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