研究実績の概要 |
神経胚期の外胚葉組織の各領域の機械的特性をより詳しく調べるため、北海道大学の原子間力顕微鏡を用いたヤング率の実測を行い、ツメガエル初期神経胚の外胚葉にヤング率の勾配が存在することを初めて明らかにした。陰圧による組織の吸引を行い、吸われた組織の長さから組織にかかる張力を推定する評価系を立ち上げ、ツメガエル外胚葉にかかる張力を測定した。AFMと吸引による評価系は、一致する結果を示したことから、外胚葉細胞は領域ごとに異なる機械的特性を有することが示唆された。また、外胚葉細胞が受ける張力を生体スケールで増減させた際の各神経マーカー遺伝子の発現パターンを、whole-mount in situ hybridizationとqRT-PCRを用いて解析し、張力の増強が神経堤マーカー遺伝子Foxd3, Slugの発現を亢進することを明らかにした。また、神経胚に機械的刺激を付加をした際に、神経形成に関わるBMP・FGF・Wntシグナル経路の活性レベルが増強されることを明らかにした。ツメガエル細胞が受ける張力を緩和する実験系として、ヒトスジシマカ由来のリン脂質スクランブラーゼAaXKRを過剰発現させる系を立ち上げた。張力の緩和は、張力の増強とは逆に、神経堤マーカー遺伝子の発現を阻害し、FGF, Wntシグナル経路を速成することを明らかにした。これらの成果を、日本分子生物学会および国際ツメガエル研究集会で発表した。また、これらの研究成果を論文としてまとめ、The International Journal of Developmental Biologyに誌に投稿し、revisionを行った。
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