今後の研究の推進方策 |
プロセス最適化によるゲート電界による伝導特性の変調,トンネル構造で見られた量子伝導特性についての調査の二点を方針とする. プロセスの最適化は,LSMOの金属絶縁体転移の最適化と,EDLT以外のゲート印加手法の探求の両面から研究の推進を試みる.金属絶縁体転移プロセスの最適化は,LSMOの金属絶縁体転移が電気伝導特性のみならず磁気特性の相転移も伴うことを利用し,電気伝導特性と磁気特性の測定を組み合わせて行う.ゲート印加手法の探求は,微細加工技術,積層技術を用いて,サイドゲートやバックゲートなど,複数の方式を試行する.サイドゲート構造は,すでに導電性探針つきの原子間力顕微鏡で二次元電子ガスにパターンを施しゲート制御をおこなった報告[1]等があり,同様の構造をリソグラフィで実現することを検討している.また,バックゲート構造は,高温超電導体のゲート制御等で行われた,SrTiO3をゲート絶縁膜に利用する方法[2]などを検討している. トンネル構造の伝導特性については,すでに観測されたものの解析に加え,原子層一層単位での結晶成長技術を用いた構造を検討している.ペロブスカイト酸化物のトンネル素子でトンネル共鳴らしい伝導現象を観測した例として,BaTiO3層の強誘電ドメイン境界に由来するとされる現象[3]が挙げられる.これに基づき酸化物の組成を層ごとに制御可能な分子線エピタキシーを用いて,絶縁層の一部に任意膜厚の金属層を埋め込むことを検討している. [1]C. Cen et al., Science 323, 1026 (2009). [2] J. Mannhart et al., Z. Physik B - Condensed Matter. 83, 307 (1991). [3] G. S. Santolino et al., Nat. Nanotech. 12, 655 (2017).
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