研究課題/領域番号 |
23KJ0702
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐藤 哲也 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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キーワード | スピントロニクス |
研究実績の概要 |
本年度わたしたちはまず、前年度に引き続き、光技術で浮遊した強磁性微粒子における磁気回転効果を考察した。強磁性共鳴を起こすと磁気回転効果によってスピンと剛体回転の間で角運動量が移行し、微粒子の高速な回転運動を生み出すことはすでに示していたが、本年度は特に回転速度ゆらぎに着目し、研究を進めた。その結果、回転速度ゆらぎからは、強磁性体内のスピンが緩和する際のショットノイズが同定できることが分かり、ショットノイズから計算されるファノ因子を求めれば、緩和過程で放出される角運動量の単位が決定できることが分かった。また、回転速度ゆらぎは、回転速度が分岐を持つ付近で顕著に増大することも分かり、我々のセットアップは、強磁性体のバルクのスピンの緩和過程を調べるのに有用であることが示された。本結果はPhysical Review Bにて出版された。 次に、わたしたちは、上述の研究に用いた非平衡開放系の理論を応用し、強磁性体バルクのスピンを今度はパルスで非平衡に励起するセットアップを考察した。本研究では、上述の研究のうち回転運動を除く代わりに温度による効果を取り入れた。本セットアップでは、カー効果等の測定を想定し、磁化ゆらぎを計算した。その結果、磁化ゆらぎを時間微分することで非平衡ショットノイズを同定できることが明らかになり、特に低温では、ショットノイズからバルクでスピンが緩和する際に放出される角運動量単位が決定できることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度の研究計画に記したように本年度は、浮遊した強磁性体に強磁性共鳴を起こした際の回転運動を考察した。本研究成果はPhysical Review Bにて出版された。 また、追加で、強磁性バルクにおける非平衡ノイズの研究も行うことができた。 以上から考えて、本年度はおおむね順調に研究が進展したと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画では令和6年度は磁気回転効果をトポロジカル絶縁体やカイラルp波超伝導体に適用することにしていたが、計画を少し変更し、当初は令和7年度に実施予定であった、スピンフォノン相互作用における磁気回転効果の影響を考察していきたいと考えている。そのセットアップとしては、まずカイラルフォノン系における磁気回転効果を考察していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和5年度は海外学会等に参加しなかったため、使用額が少なくなった。令和6年度には海外学会に行くことを予定しており、繰り越し分を使用することを考えている。
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