研究実績の概要 |
私は抗炎症性の生理活性脂質5,6-dihydroxy-8Z,11Z,14Z,17Z-eicosatetraenoic acid (5,6-DiHETE) による新規てんかん治療法の開発を目的に研究を行っている。 まず、5,6-DiHETEの生理活性および作用機序の詳細な解明を行った。5,6-DiHETEはTransient Receptor Potential Vanilloid 4 (TRPV4) チャネルを介したシグナルを抑制することが知られているため、近縁のチャネル(知的財産権等の関係上、具体名は差し控える)に対する生理活性を調べた。当チャネルの遺伝子を導入した細胞を用いたカルシウムイメージングおよびパッチクランプを行った結果、チャネル作動薬による細胞内カルシウム濃度の上昇および全細胞電流の上昇を5,6-DiHETEが抑制することを見出した。 次に、アレルギーをはじめとした免疫反応において重要な役割を持つ肥満細胞の活性に5,6-DiHETEが与える影響を検討した。野生型マウスから単離した骨髄細胞を肥満細胞に分化させ、抗原-抗体反応により脱顆粒を誘起した。顆粒から放出された酵素の量を指標に脱顆粒率を算出したところ、溶媒処置と比べ5,6-DiHETE処置は肥満細胞の脱顆粒率を抑制した。 さらに、犬てんかん症例における脂質網羅解析により、新規バイオマーカーを特定することができた。同時に疼痛モデルの脂質網羅解析を行い、てんかん病態との比較参照を通じて神経系の疾患と生理活性脂質の関係を見出してきた。こうした研究成果に基づき、病態モデルへの脂質産生制御による影響を評価中である。 以上の成果を複数の学術集会および投稿論文として発表してきた。
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