研究課題/領域番号 |
23KJ0795
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
井上 卓哉 東京大学, 数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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キーワード | 組合せ論 / 全単射組合せ論 / 数え上げ組合せ論 / 離散数学 / 可積分系に関連する組合せ論 / エルハート理論 / 平面分割 |
研究実績の概要 |
今年度は主に平面分割に関する全単射組合せ論の研究を行った。年度の前半では自身の修士論文でも扱った交代符号行列(ASM:alternating sign matrices)に関する研究を行った。修士論文で定義した,符号付き全単射の自然さを測る両立条件という概念を用いて,従来よりも自然な交代符号行列に関連する符号付き全単射を構成した。この結果は修士論文の内容と合わせて論文として投稿し,研究集会 Symmetries and Integrability of Difference Equations(SIDE 14.2)でのポスター発表も行った。年度の後半ではquasi-transpose complementary plane partitions(QTCPP)とsymmetric plane partitions(SPP)との間の全単射の構成というテーマに取り組んだ。
他に,周期グラフの配位数列に関する研究を中村勇哉助教(現名古屋大学大学院准教授)と行った。周期グラフは結晶構造を数学的に記述する際に自然と現れる対象であり,もともと東大数理のスタディグループの題材として周期グラフの配位数列について議論されていた。周期グラフの配位数列が準多項式となることはすでに中村先生らの研究で明らかにされていた。本研究ではその準周期と例外項数の上界を求め,準多項式を証明付きで具体的に決定するアルゴリズムを構成した。結果として従来から知られていた結果の別証明を与えることもでき,有理多面体に含まれる格子点の数え上げに関する理論であるEhrhart理論の綺麗な拡張が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
主たる研究テーマである可積分系に関連する組合せ論については、当初の予定通り、修士論文の内容の拡張に成功し、修士論文の内容と合わせてarXivで公開済みであり、査読付き雑誌への投稿も行った。掲載に向けて順調に作業が進んでいる。全単射組合せ論の分野においてはわずかながら海外の研究者にも認知され、新たなテーマを見つけて研究に取り組むこともできている。加えて、東京大学のスタディグループでの出会いなどから学内・学外・産業界との協働も進められている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き平面分割に関連する全単射組合せ論に取り組む予定である。当初のテーマとは異なり可積分系との陽なつながりは明らかでないが、QTCPPとSPPの間のbijectionの構成をひとつの目標とする。QTCPPとSPPの間のbijectionの構成においては、いまだ部分的な結果ではあるものの、効果的に計算機を用いることで計算機なしでの試行錯誤ではたどり着くのが難しいような全単射の構成を得ている。この手法を他の全単射組合せ論の題材に応用することは今後の本研究課題で取り組みたいことのひとつであり、当初の目標であったASM-like objectsも当然応用先として検討するべきである。 今後も平面分割・ドミノタイリングなどから、昨年度までに進展があったエルハート理論の拡張など幅広く興味のある離散数学の題材に触れ、自身の今までの研究内容と繋がりのあるテーマを積極的に探す努力をしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度参加した国際研究集会において、宿泊費等の補助を先方から受けることができたことなどから、次年度使用額が発生した。主に今年度以降の海外研究集会の旅費および研究に必要な計算機などに使用する予定である。
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