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2023 年度 実施状況報告書

EEDF測定と粒子計算のハイブリッド解析によるプラズマ推進機内部のイオン分布解明

研究課題

研究課題/領域番号 23KJ0811
研究機関東京大学

研究代表者

峯松 涼  東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2023-04-25 – 2026-03-31
キーワードプラズマ計測 / 水プラズマ / イオンエンジン / プラズマ振動 / 小型宇宙機
研究実績の概要

本研究は,推進剤の水をプラズマにし高電圧を印加したグリッドによってイオンを高速排気することで推力を生む,水イオンエンジンを研究対象としている.プラズマはマイクロ波と磁場を用いて着火する仕組みである.水イオンエンジンを小型宇宙機に搭載するために,推力向上及び寿命増加に影響する推進機内部のイオン分布を明らかにする必要がある.イオン分布の解明に向け,令和5年度は,1) 推進機内部のプラズマ状態の計測,2) 推進機内部のプラズマ振動を計測する実験系構築および実際に計測,という2点の進捗を得た.
1) 推進機内部のプラズマをラングミュアプローブを用いて計測した.プローブは推進機の下流からグリッドの孔を通して内部へと挿入した.計測した電流電圧特性を用いて,電子エネルギー分布関数を計算した.計測した結果,電子エネルギー分布関数はMaxwell分布に近いことが分かった.これまで推進機内部のプラズマについてMaxwell分布を仮定したグローバルモデルを用いて,シミュレーションが良く行われていたが,この結果から仮定の妥当性が確かめられた.以上の結果について,国際学会1件で発表した.
2) 数値計算の先行研究では周方向のプラズマ振動が確認されていたが,実際に存在するか,また数値計算では探索できないより広い作動条件で振動を確認するための計測系を構築した.エンジンの正面に分割したコレクタを設置し,それぞれの面での電流を計測することで振動の存在を確認した.振動は周方向に伝搬していることが結果から示唆されている.この振動を誘起することで推進機の性能をさらに向上することができる見込みである.
これら2つの研究成果から,マイクロ波放電式イオンエンジン内部のプラズマ状態の特徴が,実験的に解明された.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

令和5年度は研究計画の通り,ラングミュアプローブを用いた計測手法を確立し,実際に電子エネルギー分布関数の計測を行った.計測した結果,先行研究のキセノンでの計測結果と異なり,水を推進剤に用いた場合電子エネルギー分布関数がMaxwell分布に近いことが分かった.研究の成果は国際学会34th International Symposium on Space Technology and Scienceで発表した.
また,当初の計画に加えて,推進機内部のプラズマ振動を計測する実験系構築および実際に計測を行った.実験は推進機の前方に分割したコレクタを設置し,各面の電流を計測することで行われた.計測の結果,水イオンエンジンのプラズマ振動を初めて実験によって計測することに成功した.観測された振動を誘起することで,推進機の性能を向上させることができる見込みである.以上の成果について,国際学会1件(採択済み)での発表を予定している.
このように,当初の計画に加えてプラズマ状態の新たな計測に成功したことが,達成度の理由である.

今後の研究の推進方策

令和6年度は,研究計画通り(1)ハイブリッド解析手法で使用するイオンの粒子計算手法を確立する,とともに(2)プラズマ振動と推進機性能の対応について明らかにする,ことを主な研究課題とする.
(1) 小型イオンエンジン内部におけるイオンの粒子計算手法を確立する.昨年度実施したラングミュアプローブでのプラズマ計測結果と粒子計算のハイブリッド解析手法を用いて,アンテナへの電圧印加による推力向上要因の解明を行う.ハイブリッド解析手法の妥当性確認は,Retarding potential analyzerによる計測結果と計算結果を比較することにより実施する.
(2) 昨年度計測に成功したプラズマ振動について,より多くの実験条件で計測を行う.計測した振動結果と推進機性能を比較し,振動が性能に及ぼす影響について考察する.
以上2つの研究方針から,水イオンエンジンの性能向上に向けた指針を獲得する.研究成果について,国際学会1件(採択済み)での口頭発表,国内学会1件での口頭発表,および論文誌への投稿を予定している.

次年度使用額が生じた理由

当初の計画に加えて,プラズマ振動という新たな実験に取り組んだ際に,多くの部品を自作したために,使用額に差が生まれている.自作した理由としては,企業に発注するのと同程度の精度の部品をより短い納期で取得することができるためである.令和6年度は研究計画時に加えて海外で開催される国際学会での発表および論文誌への投稿,また海外研究室での学術調査を行う予定があり,申請時以上の予算が必要となる予定である.

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [国際共同研究] マサチューセッツ工科大学(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      マサチューセッツ工科大学
  • [学会発表] Langmuir probe measurements within a water-propelled gridded ion thruster2023

    • 著者名/発表者名
      Ryo MINEMATSU, Yasuho ATAKA, Hiroyuki KOIZUMI, and Kimiya KOMURASAKI
    • 学会等名
      34th International Symposium on Space Technology and Science
    • 国際学会

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公開日: 2024-12-25  

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