研究課題
今年度は、細胞内で相分離液滴を形成しうる配列をもつタンパク質が、実際に細胞内で液滴形成するのかを判別できるinduced-LLPS法を確立し、生じた液滴がどのような機能をもつかを調べる本研究のアプローチの妥当性を実証することを目的とした。まず、induced-LLPS法の実現に適した分子ツールの候補として見出された自己集合性YKペプチドタグの液滴形成メカニズムを調べた。YKペプチドはチロシン(Y)とリシン(K)を繰り返したカチオン性のペプチドタグであり、細胞内のATPのようなポリアニオンによって架橋され、自己集合することが示された。また、液滴のようなマイクロスケールの構造を形成する上では、細胞内のクラウディング環境が寄与していることが示唆された。さらにYKペプチドタグは、細胞内での液滴形成が既知なタンパク質に融合した場合にその液滴形成を誘導でき、変異導入によって液滴形成能を失ったバリアントに融合しても液滴に成熟しないことが明らかとなった。このことから、YKペプチドは細胞内での液滴形成のポテンシャルを調べるinduced-LLPS法に適した分子ツールであることが示された。次に、自己集合性ペプチドタグによって標的タンパク質を細胞内で集積化し、形成された集合体へ濃縮してきた内在性のタンパク質群をビオチンリガーゼTurboIDによってラベル化し、LC-MS/MS解析で同定するアプローチを実証するため、今年度はまず先行研究で確立されていたY15ペプチドタグを用いた。標的タンパク質のモデルとしてアクチン重合に関与するNck1を選択し、Y15タグによって構築されたNck1の人工的な集合体に濃縮されたタンパク質群を同定した。その結果、アクチン重合に関与する多様なタンパク質が同定され、自己集合性ペプチドタグを用いた本研究アプローチの妥当性が示された。
橋本匡浩, 三木卓幸, Ivan V. Korendovych, 三原久和; Retro-aldol 反応の触媒を目指したβシート性de novoペプチド触媒の設計, 第17回バイオ関連化学シンポジウム, 2023年9月
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Journal of Peptide Science
巻: 30 ページ: -
10.1002/psc.3536
https://confit.atlas.jp/guide/event/biosympo2023/subject/2PA-15/advanced