研究課題/領域番号 |
23KJ0929
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
金子 寛明 東京工業大学, 理学院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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キーワード | コンドリュール / ダスト / コンドライト隕石 |
研究実績の概要 |
コンドリュールの中には、細粒のダストでできたリムで覆われたものが多く存在する。近年、このリムの起源として、コンドリュール表面へ高速衝突したダストの付着が提案された。このような高速衝突は、コンドリュールの起源として考えられている様々な加熱現象の間に起きうる。そこで本研究では、コンドリュールの形成とリムの形成が同一現象によるものであると仮定する。本研究の目的は、この仮定のもとで、コンドリュールの形成モデルにリムの形成を導入し、隕石中に実際に観察されるリムの性質との比較を行うことで加熱現象の発生状況を明らかにすることである。 本年度は微惑星衝突によるコンドリュールの形成モデルについて取り組んだ。この現象下では、衝突後に放出したコンドリュールや蒸気の“雲”は原始太陽系星雲に向かって高速で広がると考えられる。この時、ダストの高速衝突と付着によるリムの形成も起きる可能性がある。本年度の成果は、先行研究のモデルと結果の再現を完了し、新たに背景の蒸気やダストから受ける抵抗を考慮したコンドリュールの運動をモデルに組み込んだことである。リムを作るダストは蒸気から再凝縮したダストや広がる蒸気の “雲”が掃いた星雲中のダストと考えられる。このようにして作られるリムが実物と同じ性質(厚みなど)を示す条件から、衝突した微惑星のサイズや原始太陽系星雲中のローカルなガス・ダスト密度を明らかにできる感触を得た。次年度では、この微惑星衝突時のリムの形成についてモデルを洗練し、現象の発生状況を具体的に制約する予定である。 元々予定していた一次元の衝撃波モデルについては、本年度は先行研究の計算結果を再現するコードを作成するところまではできた。次年度では上記の微惑星衝突モデルの研究を優先しつつ、衝撃波モデルにおけるリムの形成やダストの加熱によるプレソーラー粒子の破壊について条件の調査も行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画から変更して微惑星衝突の場合について取り組んだため、計画していた衝撃波の場合の進捗はやや遅れている。しかし、微惑星衝突については、リムの形成という新しい視点をもとに衝突した微惑星のサイズや原始太陽系星雲中のローカルなガス・ダスト密度を明らかにできる感触を得た。総合して、順調に進んでいると考える。
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今後の研究の推進方策 |
微惑星衝突や衝撃波におけるリムの形成のモデルを洗練して、現象の発生状況を明らかにする。得られた結果をもとに、原始太陽系星雲中の他の現象や微惑星・惑星形成の描像との関連性を議論し、論文としてまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
経費として、論文投稿の際の英文校正費や投稿料を計上していたが、本年度中に論文投稿まで到達しなかったため次年度使用額が生じた。次年度分と合わせて、学会の参加費・講演費・旅費、論文投稿の際の英文校正費や投稿料、外部の研究者と議論するための出張費等として使用する。
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