研究課題/領域番号 |
23KJ0939
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
橋本 陽太 東京工業大学, 生命理工学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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キーワード | ノンコーディング領域 / 小さいタンパク質 / 上流ORF / ヒトゲノム |
研究実績の概要 |
ヒト非コードRNAやmRNAの非翻訳領域上には、100コドン以下の短い読み枠(sORF)が数百万も存在する。ごく一部のsORFからは小さいタンパク質(Microprotein;MP)が翻訳されることが明らかになっており、MPはヒトプロテオームの新たな構成要素として注目されている。しかし、しかし残りの膨大なsORFのうち、どれから実際にMPが細胞内で作られるのか分かっていない。Ribo-seqではリボソームが結合しているsORFを特定することは可能であるが、実際にMP全長が翻訳されているのか、そして翻訳されたとしても細胞内で安定に存在しているのかはRibo-seqでは判別できない。本研究は、細胞内でMPが機能するための前提となる「翻訳のされやすさ」や「細胞内での安定性」を決定している要因を明らかにすることで、sORF発現機構への理解を深めることを目的としている。我々は本課題の採択以前に、ヒト培養細胞内で128種類のMPを強制発現させたのち、それぞれの細胞内発現量を測定した。具体的には、MPのC末端にFLAGタグを融合させて発現し、抗FLAG抗体を用いてELISA法で定量した。その結果、約9割のMPの細胞内存在量が、コントロールであるGFP-FLAGと比べて低いことがわかっていた。このことから、これらのMPはヒト培養細胞内で翻訳されにくいか、翻訳されても細胞内で安定に存在しにくい可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、128種類のMPの様々な位置にGFPやFLAGのタグを融合し、強制発現時の細胞内存在量をELISA法で測定した。その結果、翻訳抑制を受ける可能性のあるsORFや、翻訳後に分解する可能性のあるMPなどに128種類を分類することができた。 一方、FLAG単独融合の場合に細胞内で安定に発現した約1割のMP(8種類)に対しては、プロテオミクス解析を用いて相互作用するタンパク質の探索を行った。これまでの結果から、核に局在するMPが、同じく核に局在するタンパク質と相互作用していることが明らかになっている。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、sORFが翻訳抑制を受けたり、MPが翻訳後分解を受けることの生理学的な意義を調査する予定である。また、MPのアミノ酸配列から、翻訳抑制・翻訳後分解といった性質を予測することを目指す。さらに、核に局在し、別のタンパク質との相互作用しているMPに関して、その機能解析を進める。
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