研究課題/領域番号 |
23KJ1019
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
栩木 有理沙 長岡技術科学大学, 工学(系), 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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キーワード | バイオセンサ / 電気化学センサ / バイポーラ電気化学 / 電気二重層 / インピーダンス |
研究実績の概要 |
本研究では,バイポーラ現象を利用した多検体の連続的な検出が可能な走査型バイオセンシング法の確立を目指している.目的達成のために,①走査型測定用装置の作製および基本性能の評価,②走査が測定値に及ぼす影響とそのメカニズムの解明,③他の分析手法との比較による本手法の有効性の評価,の3項目について取り組む計画である. 本年度は,項目①について,電極の高速走査を実現するために,XYZ軸自動位置決めステージを組み合わせることで専用装置の作製に取り組んだ.本装置を用いて駆動電極を走査しながら電気化学インピーダンス測定を実施し,基本性能の評価を行った.検出対象の基板には,未修飾の金基板,チオール類の自己組織化単分子層やタンパク質を修飾した基板を使用し,入力信号の周波数や電極の走査速度,駆動電極-バイポーラ電極間の距離などのパラメータがインピーダンス変化に及ぼす影響を調査した.走査速度をステージの最高速度である40 mm/sとした場合,インピーダンスアナライザの時間分解能の限界のため測定点が不足するという問題が生じたものの,測定値は走査速度によらずほぼ一定の値を示した.また,金基板上に固定したウシ血清アルブミンの固定量の違いをインピーダンス値で識別することができた.以上の結果から,電極を高速走査しながら電気化学測定を行う「走査型」センシングが可能であることが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は項目①について,走査型測定用装置の作製に取り組み,本手法を実現するための環境を整備した.さらに,作製した装置を用いて駆動電極を走査しながら電気化学インピーダンス測定行い,基本性能の評価が完了した.また,本手法によりバイポーラ電極上に固定化したタンパク質の検出に成功し,本装置がバイオセンサとして利用可能であることを確認した.以上のことから,本研究はおおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,項目②の走査が測定値に及ぼす影響とそのメカニズムの解明のため,これまで取得した基本データをもとに等価回路解析や電界シミュレーションを行う.また,項目③の他の分析手法との比較による本手法の有効性の評価について,本手法により抗原抗体反応やアビジン-ビオチン結合のような生体反応の検出を実施し,通常の電気化学センサ(三電極)との性能を比較する.さらに,本センサの検出感度や測定に要するコスト(時間・費用)を一般に行われている種々の生化学分析手法と比較し,本手法の有効性や課題を明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた電極サイズの約半分のサイズの電極での実験が可能となったため,電極購入費が抑えられた.次年度使用額は抗原や抗体などの試薬類の購入に充てる予定である.
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