研究課題/領域番号 |
23KJ1023
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
河村 亜希 金沢大学, 学校教育系, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-06-29 – 2027-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / 栄養 / 運動 / 骨格筋 / エネルギー代謝 / 蛍光イメージング |
研究実績の概要 |
骨格筋のミトコンドリアは、運動時の筋収縮に利用されるエネルギーを産生する細胞小器官であり、その量や機能の低下は糖尿病や肥満などの代謝異常症の要因となる。ミトコンドリア代謝を高めることにより老化抑制や疾病予防、さらには体力向上にアプローチすることは、高齢化社会における重要課題である。本研究では、細胞・動物実験により特定の栄養成分の付加がミトコンドリア量やエネルギー代謝能に及ぼす影響を検討し、そのメカニズムを明らかにすると共にヒトへの応用を目指す。同時に、筋収縮とATP産生の関係を明らかにするために、運動模倣刺激(筋収縮)や栄養刺激に伴う代謝因子の変化を可視化できる細胞評価モデルの開発にも挑戦する。 今年度は、時空間情報と定量性を兼ね備えた最新の蛍光イメージング法を用いて、骨格筋細胞においてオルガネラ特異的な代謝基質評価モデルを確立することに取り組んだ。このモデルでは、筋細胞においてエネルギー基質やその他の代謝因子の動態を可視化し、オルガネラ特異的に運動模倣状態での筋細胞代謝の挙動を検証することを目指すものである。そのためには、筋収縮に伴うATP、グルコース、乳酸、pH、Ca2+などの複数のパラメーターのダイナミックな変化を空間的(ミトコンドリアや筋小胞体)・時間的に同時定量し、その動態を明らかにする必要がある。今年度は遺伝子導入が極めて困難とされる分化させた筋細胞(C2C12)に上記パラメーターの蛍光センサーを導入できる最適な条件を見つけるために、細胞の分化条件や培養温度、蛍光センサーの導入方法などを検討した。その結果、分化誘導後3~5日目の筋管細胞に対して蛍光センサー濃度を規定量以上にしてエレクトロポレーションを行うと、蛍光センサーの導入効率が高まる傾向が認められた。また、蛍光センサーの種類によって筋管細胞への各センサー導入に最適な培養温度が異なる可能性も示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年4月から12月末まで出産・育児により研究中断期間があったため、研究の進捗が遅れたとともに、研究計画の一部を変更した。しかしながら、研究再開準備支援を受けて2024年1月から研究を再開し、短時間勤務ではあったものの、培養細胞(筋管細胞)への蛍光センサーの導入効率を高める条件を見出すことができた。今後はこの実験モデルを用い、ミトコンドリア(オルガネラ)特異的に運動模倣状態での筋細胞代謝の挙動の検証に結び付けたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は培養系において、よりin vivoに近い条件でオルガネラ特異的に代謝因子のライブイメージング・定量が可能かを明らかにすべく、分化誘導後の日数をさらに長くした筋細胞における蛍光センサーの導入方法の検証を重ねる。最適な条件が見つかり次第、筋収縮模倣刺激に伴うATPおよびCa2+などのパラメーターの動態を定量的に測定し、運動時のエネルギー代謝と筋収縮の関係、さらには栄養刺激による代謝の変化をミトコンドリアに焦点を当てながら明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該次年度使用額は特別研究員奨励費(雇用PD等)による追加配分によるものであり、特別研究員の雇用に伴う社会保険料(事業主負担分)等に支出する予定である。
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