研究実績の概要 |
第三次健康日本21において2型糖尿病の予防・改善による健康寿命の延伸が求められている。2型糖尿病は生体内で最大の血糖処理器官である骨格筋のインスリン効果の悪化(インスリン抵抗性)が主な発症原因である。このインスリン抵抗性を引き起こす一因として、骨格筋におけるミトコンドリア(Mito)呼吸機能の低下が挙げられる。近年、2型糖尿病の予防・改善に対する温熱刺激の有効性が報告されているものの、温熱刺激が骨格筋のMito呼吸機能に及ぼす影響とその分子機序は不明である。我々はこれまでに、筋細胞に多く発現するタンパク質:ミオグロビン(Mb)がMitoにも内在し、Mito呼吸機能を高めている可能性を発見した。そこで本年度は、まず、温熱刺激が骨格筋のMito呼吸機能を高めるか、その分子機序にMito内在型Mbの増加が関与しているかを検証した。C57BL6/JJ雄性マウスに対して3週間の暑熱環境曝露(39±1℃, 30分/日, 週5日)を課した後、下腿三頭筋からMitoを単離して、Mito呼吸機能の分析およびMbの検出に用いた。その結果、温熱刺激によって単離Mitoの複合体IIおよび複合体IVを介した酸素消費速度が上昇した。しかしながら、温熱刺激によって骨格筋のMb発現量およびMito内在型Mb量は変化しなかった。以上の結果から、温熱刺激はMb非依存的に骨格筋のMito呼吸機能を高められることが示唆された。
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