研究課題/領域番号 |
23KJ1031
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
端野 開都 金沢大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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キーワード | Vibro / ヘモリシン / TLH / アコヤガイ |
研究実績の概要 |
アコヤガイに感染する細菌Vibrio sp. MA3株の毒性評価のため、Vibrio属細菌の主要な病原因子と考えられるヘモリシンをコードする遺伝子Vhe1の塩基配列の解析を行った。その結果、Vhe1遺伝子は417のアミノ酸から構成される47.2 kDaのタンパク質であり,TLH(thermolabile hemolysins)ファミリーに分類されることが推定された。さらに、ヘモリシンタンパク質の性質を解析するために、Vhe1大量発現系を構築した。得られた精製Vhe1の溶血活性、及びホスホリパーゼ活性について、①至適温度と至適pH、②金属イオンによる活性阻害効果を解析した。また、③異なる長さの脂肪酸(C4、C8、C10、C12、C16、C18)を持つリン脂質を用いて、ホスホリパーゼ活性の基質特異性を調べた。 ①溶血活性、及びホスホリパーゼ活性の至適温度と至適pHについて調べた結果、両方について至適温度は50℃であり、至適pHはそれぞれpH8.5およびpH8.0であることが分かった。その一方で、温度とpHが至適条件から離れるにつれ急激に活性が低下することが明らかとなり、Vhe1タンパク質は低温あるいは高温・酸性あるいはアルカリ性の条件で安定性に欠けることが示唆された。 ②Vhe1に対する金属イオンの影響を解析したところ、Cu2+、Cd2+、Zn2+、Ni2+が溶血活性、及びホスホリパーゼ活性を有意に阻害することが分かった。 ③異なる炭素鎖の脂肪酸をもつリン脂質を基質として、ホスホリパーゼ活性を測定したところ、Vhe1は中鎖脂肪酸(C8、C10、C12)に対して特異的に活性を示すことが示唆された。 これまでに、Vibrio属細菌のヘモリシン(TLH)の研究は殆ど行われていない。従って、Vhe1の特性解析は、Vibrio属細菌の病原性メカニズムを解明する上で重要な成果と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度でVibrio sp. MA3株の主要な病原因子と考えられるヘモリシンVhe1の大量発現系の確立と、精製したVhe1の特徴解析を完了しているため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
宿主であるアコヤガイの免疫機構に着目して、異なる温度でMA3株に感染した際の遺伝子発現の変化をRNAseqにより網羅的に解析する予定である。
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