研究課題
今年度は当初の予定通り、超高圧下で電気化学反応を行うための準備を行った。従来とは異なるグラファイトヒーターの側面からの通電においても、底面からの通電の7割程度の電力効率に加熱可能であることを見出した。目的の合成はトポケミカル反応であるため、600 ℃程度まで加熱できれば十分であるが、800 ℃まで再現よく安定に加熱できることを確認した。また、常圧環境でバルク試料や薄膜試料に対して、電気化学実験を行うためのセッティングを開発し、薄膜試料のリチウム化やプロトン化及び、薄膜試料とバルク試料のイオン伝導測定が可能になった。加えて、今回の研究対象であるアニオン化学に関連し、酸水素化物のバルク・薄膜研究を実施した。バルク研究に関しては、常温常圧の温和な条件で合成でき、環境負荷は小さいが、衝撃により局所的には高圧印加が可能なボールミルを用いて物質探索を行った。その結果、従来の高圧合成技術では合成できなかった酸水素化物(SrScO2HとBaYO2H)を含む6種類の酸水素化物合成に成功した。これは、静的に高圧印加がなされず、イオンが極端に圧縮されていないことに起因していると考えられ、瞬間的な加圧で合成できるボールミルの強みであるといえる。また、系統的な物質探索を通し、原料のせん断弾性率がボールミルの反応性の可否を表す指標なることを見出した。さらに、同様の傾向が酸化物合成にも適用できることを見出し、酸水素化物を超えて今後の物質開発の新しい指針やボールミル合成の新たな学理を生み出すことに成功した。酸水素化物の薄膜合成に関しては、新たに水素系化合物合成に特化したパルスレーザー堆積(PLD)装置を設計し、立ち上げ、整備した。ヒドリド伝導性酸水素化物の初めてのエピタキシャル薄膜合成例として、La2LiHO3の薄膜合成に成功し、その薄膜においてバルク多結晶よりも4桁高いイオン伝導を見出した。
2: おおむね順調に進展している
今年度は当初の予定通り、超高圧下で電気化学反応を行うための準備を行った。従来とは異なるグラファイトヒーターの側面からの通電においても、底面からの通電の7割程度の電力効率に加熱可能であることを見出した。目的の合成はトポケミカル反応であるため、600 ℃程度まで加熱できれば十分であるが、800 ℃まで再現よく安定に加熱できることを確認した。また、常圧環境でバルク試料や薄膜試料に対して、電気化学実験を行うためのセッティングを開発し、薄膜試料のリチウム化やプロトン化及び、薄膜試料とバルク試料のイオン伝導測定が可能になった。以上のように次年度以降に向けて、順調に設備の開発が進んでいる。申請課題に関する研究自体は設備開発に留まっているが、本研究課題からの派生研究として、今回の研究対象であるアニオン化学に関連し、酸水素化物のバルク・薄膜研究に関して大きな進捗が生まれた。バルク研究に関しては、衝撃により局所的には高圧印加が可能なボールミルを用いて物質探索を行い、従来の高圧合成技術では合成できなかった酸水素化物(SrScO2HとBaYO2H)を含む6種類の酸水素化物合成に成功した。さらに、酸化物を含めた系統的な物質探索を通し、原料のせん断弾性率がボールミルの反応性の可否を表す指標なることを見出した。これにより今後の物質開発の新しい指針やボールミル合成の新たな学理を生み出すことに成功した。今後は、高圧下の電気化学反応の対象物質の合成にボールミル合成を活用できる。加えて、酸水素化物の薄膜合成に関する研究も進め、新たに水素系化合物合成に特化したパルスレーザー堆積(PLD)装置を設計し、立ち上げ、整備した。ヒドリド伝導性酸水素化物の初めてのエピタキシャル薄膜合成例としては、La2LiHO3の薄膜合成に成功し、その薄膜においてバルク多結晶よりも4桁高いイオン伝導を見出した。
当初の研究課題(アニオン間結合形成)に対しては、2つの方針で研究を進める。1つは、前駆体となるメカノケミカル合成による酸化物・窒化物のメカノケミカル合成、もう1つは、高圧印加と薄膜・積層構造を用いた電気化学反応である。前者に関しては、原料の選択指針まで見出しているため、狙いに沿った物質合成を進める。後者に関しては、超高圧圧力環境だけでなく、薄膜のエピタキシャル応力や積層による界面効果も活用して研究を進める。多様な薄膜合成が可能な装置の立ち上げ作業が完了し、積層デバイスの作製とそれを使った実験の準備が整いつつあるため、本年度は薄膜研究の設備開発にも力を入れる。加えて、昨年度派生的に見出した酸水素化物のメカノケミカル合成に関しても新たに興味深い成果を見出しているため、それに関する研究も継続して進める。申請当初のアニオンの結合に関する研究ではないが、アニオン化学に深く関連する研究であり、大きな括りでは関連研究であるといえる。また、薄膜への電気化学反応を用いたアニオンの制御に関する研究も進める。バルクの物質研究で見出された知見をフル活用し、従来薄膜では見過ごされてきた観点(体積の少なさから本質的に解析困難だった点)を補い、バルク研究との協奏により、複合アニオン化合物のデバイス創製を試みる。こちらもアニオン化学に深く関連する研究であり、大きな括りでは関連研究であるといえる。
初年度は設備の準備に時間を費やしており、原料の購入に使用予定だった経費を次年度以降に使用するように計画を変更したため次年度使用額が生じた。次年度は、当初の使用予定額に加え、本年度分の予算も使用して追加で試薬の購入を行う。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件) 備考 (4件)
Journal of the American Chemical Society
巻: 146 ページ: 11694~11701
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Crystal Growth & Design
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https://www.t.kyoto-u.ac.jp/ja/research/topics/20240418