研究課題/領域番号 |
23KJ1161
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
林 優依 京都大学, 基礎物理学研究所, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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キーワード | 閉じ込め / QCD真空 / 一般化対称性 / 量子色力学(QCD) |
研究実績の概要 |
本研究課題は, (1) トポロジカルな視点 と (2) 解析的な視点 という2つのアプローチをベースとして,新しい非摂動的手法から得られるカラー閉じ込め機構の新しい理解の獲得を目指すものである.今年度は,前者に注力し,QCDの真空構造の理解を目指して,一般化対称性に関係した非摂動的手法の発展を行った. 具体的には,一般化対称性のアノマリーの議論に動機づけられた,最近提唱された半古典的手法を用いて, bifundamental QCDやQCDの真空構造の研究を行った.この半古典的手法は,ある特定のコンパクト化を行い,閉じ込め的な性質を維持しつつ解析しやすい理論に変形して,解析的に閉じ込めを理解する試みである. Bifundamental QCDとは,ある意味でQCDのフレーバー対称性をゲージ化した模型で,理論的文脈から興味を持たれている模型である.我々は,この模型を半古典的手法で調べた.得られた半古典的描像は,期待された相構造を説明し,ある理論との等価性の予想 (ラージNでのbifundamental QCDと超対称Yang-Mills理論との等価性) を支持する結果を与えた. さらに,同じ手法でQCDの真空構造の解析を進めた.この半古典的手法は,期待されるQCDの真空構造を説明することができ,その結果を通じて,「chiral Lagrangian (QCDの低エネルギー有効理論として広く用いられる模型) にどうη’中間子を入れると理論の大域的構造と相性がよいか」について提案を行った.具体的には,η’の周期性を,標準的なものからカラーの数倍だけ伸ばし,アノマリー由来のη’質量項をその周期性に対応したものにすることで,Yang-Mills真空の非自明な構造を自然に含んだ形にすることができることを指摘した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は主に,QCDやQCDに関係する模型について半古典的な解析を行い,一定の成果を得た.今年度中に受理された論文は1件と多くないが,これらの研究を通じて,今後の研究につながる複数の方向性と,閉じ込めのメカニズムについて基礎的な知見を得ることができたため,今後の影響も加味すると順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究で得た知見から,閉じ込めのメカニズムについて,より基礎的なことについてアプローチできる見込みが立ったため,それについて取り組む.また,有限密度QCDの文脈における,ゲージ・ヒッグス系での閉じ込め-Higgs連続性とに関係する研究も進行中であり,この研究も発展させる.さらに,次年度から「解析的な視点」,従来のカラー閉じ込めのメカニズムの再解釈,についても着手したい.
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