| 研究実績の概要 |
福島第一原子力発電所で発生した複雑な組成をもつ燃料デブリの安全な最終処分を実現するため、本研究は有機酸が燃料デブリの溶解挙動に与える影響を解明することを目的とする。 まず、ジルコニウムが均一に固溶した立方晶の(U,Zr)O2相に対し浸漬試験を実施し、その溶解挙動を評価した。試験の結果、強酸性条件下ではウランとジルコニウムが調和的に溶解し、UO2試料と同程度の速度で溶解することが確認された。一方、酸性条件下では固相表面にZrの二次固相が形成されることにより、(U,Zr)O2相からのウラン溶出が抑制される現象が認められた。なお、シュウ酸添加時には強い錯生成能により二次固相の生成が阻害されウランの溶解抑制効果が見られなかったが、錯生成能の低いマロン酸添加時には再び二次固相が形成され、ウラン溶出が低下する結果となった。 さらに、UO2、Zr、ステンレスを初期組成とする模擬燃料デブリを各種加熱条件下で作製し、pH7条件下でのマロン酸濃度変化が溶解挙動に与える影響を検討した。不活性雰囲気下1200℃加熱時にはUO2相とFe‐Zr合金相が形成され、1600℃加熱時には(U,Zr)O2相およびFe3O4相が生成された。浸漬試験の結果、単一固相試料と比較して、模擬燃料デブリ試料もマロン酸添加下では同一の平衡状態に達すると考えられる。特に、(U,Zr)O2相を主要固相とする試料ではウランの溶解量が低下しており、固相表面でのZr二次固相の形成がウラン溶解の抑制に寄与していると考えられる。 以上の成果は、有機酸が核種の溶解促進、錯体生成、及び溶解度制限固相の形成を通じて、燃料デブリの溶解挙動に多面的な影響を及ぼすことを示唆するとともに、各固相の挙動を個別に評価することで混合系全体の解釈が可能であることを明らかにした。
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