研究課題/領域番号 |
23KJ1210
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
牛丸 健太郎 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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キーワード | 応力逆解析 / 岩脈 / 九州北西部 / 中新世 / 引張場 |
研究実績の概要 |
本研究は,新第三紀における過去2000万年程度の九州北西部の応力場の変動史の解明することを目的としている.そのために,九州北西部の中新世から鮮新世の岩脈群の方向データを測定し,混合ビンガム分布を用いた新しい岩脈法を使って岩脈群形成時の応力状態を推定する.本年度は以下の通り佐賀県唐津市呼子地域での岩脈の方向データの収集を主に行った. これまでに,呼子地域周辺で合計約80枚の安山岩質玄武岩の岩脈を観察し,それらの3次元的な方向データを測定した.その結果,呼子地域では岩脈群が数キロメートルの規模で放射状を成していることが分かった.放射状岩脈は火山による局所的な応力状態を反映して形成されると考えられている.そのため,広域的な応力状態を知るためには,放射状から平行状に岩脈群の方向が変改する様子を確認する必要がある.そこで,平行岩脈がみられる地域まで調査範囲を拡大し,岩脈の方向データを取得した.得られた方向データを混合ビンガム分布法にて応力解析を行った結果,正断層型応力が得られた.このことから,岩脈群の形成時(中期中新世の中頃)には九州北部は伸長場にあったと考えらえる. これまでの研究では,約1500万年前に起こった日本海拡大を境にして,九州北西部の応力状態は引張から圧縮へ転換したと考えられてきた.しかし,本研究の結果は,従来の病像を覆し,日本海拡大後の中期中新世に九州北西部は引張場にあったことを示した. 上述の唐津市での研究に加えて,九州北西部の平戸島での予備調査も行った.海岸露頭にて岩脈を確認した結果,解析に十分な量の岩脈の方向データが取得できそうだと判断された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は呼子地域での調査を重点的に行ったため,他地域でのデータ取得がやや遅れている.呼子地域での調査の結果,当初の予想に反して岩脈群が放射状をなしていることが分かった.放射状岩脈は火山による局所的な応力を反映して形成される.そのため,研究目的に適った広域応力状態を推定するには,放射状から平行状への側方変化を確認する必要がある.このため,従来の計画より調査範囲を拡大して岩脈の方向を調査し,平行岩脈の方向を調べた.その結果,調査日数はかかったものの呼子地域の岩脈群の形成時の広域応力状態が引張場であることを明らかにすることができた.
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今後の研究の推進方策 |
従来は九州本土と五島列島での岩脈群のデータ取得を予定していた.しかし,研究期間内で一定の成果を上げるため,次年度は九州本土の岩脈群に絞ってデータの取得と解析を行う.九州本土だけでも中期中新世から鮮新世に形成した岩脈群が存在するため,過去1200万年程度応力場の変遷史を明らかにすることができると見込まれる.また,研究結果を統合し応力場の変動史の議論を行なう. 呼子地域の放射状岩脈群の中心付近に,先行研究で記載されていない火砕岩類を発見した.火砕岩の岩相や岩質,分布状況から判断すると,これらは放射状岩脈の形成時に存在していた火山性の窪地の堆積物だと判断される.今後,これらの火砕岩類について基本的な記載も行い,放射状岩脈との関連を調査する.
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次年度使用額が生じた理由 |
天候と潮汐の関係で調査日数が計画より数日短くなったため.本研究は海岸での地質調査を主体としているため,干潮時かつ好天候の日に調査を行なう必要がある.次年度使用額は,昨年度行えなかった分の調査日数を次年度の調査日数に適切に追加することで使用する予定である.
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