研究課題/領域番号 |
23KJ1214
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高橋 卓弥 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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キーワード | ブラックホール / アクシオン / 重力波 / コンパクト連星 |
研究実績の概要 |
アクシオンは超弦理論からも予言される未発見の粒子である。このような粒子は質量が非常に軽く、ブラックホールの周りに雲のような凝縮体を形成し得る。また、現在発展が著しい重力波観測において、連星ブラックホールの合体が主な観測対象の一つである。連星系を成すブラックホールの周りにアクシオン雲が存在する時、重力波に特徴的な信号が現れ、アクシオンを検出できる可能性がある。本研究では、アクシオン雲を持つ連星系の発展を明らかにし、重力波からのアクシオン探査の手法を確立することを目指している。 まずアクシオン雲を持つ連星系の進化を、これまで考慮されていなかった効果も含めて解析した。連星系における潮汐相互作用は、アクシオンのブラックホールへの散逸を誘起する。しかし、アクシオンの固有振動と連星進化の時間スケールには大きな差があり、素朴に系全体の運動方程式を解くことは困難であった。そこで物性理論の分野において類似の系を扱った問題があることに着目し、その知識を応用した。その結果、ブラックホールへの散逸と連星軌道運動への角運動量輸送を同時に含めて進化を追うことができる定式化を与えることに成功した。実際に系の進化を解くことにより、ブラックホールへの散逸による効果はブラックホールのわずかなスピンダウンを引き起こし、現状の制限に変更は与えないものの、雲の進化においては散逸を促進するという大きな影響を与えることを明らかにした。また、軌道運動への反作用が重力波信号に観測可能な兆候を残すことを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、アクシオン雲を持つ系の進化の全貌を明らかにした。これは、ブラックホール連星合体からの重力波によるアクシオン探査の可能性を定量的に評価するための十尾段階が完了したことを意味する。したがって、順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
アクシオン雲を持つ連星系の軌道進化の計算から重力波の波形を求める。得られた波形の解析へと移行し、より定量的な予言を与える。さらに、アクシオンの自己相互作用の効果を含めた拡張も視野に入れている。
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