研究課題/領域番号 |
23KJ1270
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松田 隼一朗 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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キーワード | quantum graph / adjacency matrix / spectral graph theory / Frobenius algebra / string diagram / quantum group / expander graphs |
研究実績の概要 |
量子グラフの性質のスペクトルによる特徴付けをより深く理解するために、量子グラフの準同型についての研究を進めた。隣接行列に着目した準同型の定義と辺が生成する双加群に着目した先行研究の定義の同値性を調べ、値域の量子グラフが古典グラフに近いような強い条件を満たしていれば両者が一致することを証明した。その系として量子グラフが二部であることと古典2-彩色可能であることとが同値になることを示した。さらに、正則量子グラフの二部性のスペクトルによる特徴付けと併せて、正則連結量子グラフについて全種の量子2-彩色可能性が同値になることを示した。 2023年に導入されたKMS-無向量子グラフと従来の(GNS-)無向量子グラフを比較し、KMS-無向であることをGNS側のstring diagramに翻訳した。無向単純量子グラフに向き付けが存在しない場合があることを2×2行列環上の具体例により示したことで、古典グラフではできた向き付けを利用した証明が一般には通用しないことが判った。 上記を正則量子グラフの連結性・二部性のスペクトルによる特徴付けの結果とまとめて論文``Algebraic connectedness and bipartiteness of quantum graphs''として発表した。 2023年11,12月のToronto出張ではWaterloo大学のグループとの議論を通じて量子群のUlam安定性、離散的でない無限次元正則量子グラフの次数、von Neumann環の包含の量子グラフとしての解釈などについて研究を進めた。2024年1月のUCSD出張では量子グラフの連結性や非可換Perron-Frobenius理論について議論を深めた他、辺が生成する双加群が一致してもスペクトルが異なる量子グラフの例を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究実施計画においては2022年度の内に量子グラフの連結性・二部性のスペクトルによる特徴付けについての研究に区切りをつけて2023年度はエクスパンダー量子グラフや作用素環の包含から得られる量子グラフを進めていく予定であった。しかし、スペクトルによる特徴付けに関連する量子グラフの準同型概念についてより深く解明しておくことが今後の研究において有用かつ必要であると認識したため、予定を変更して準同型の定義の同値性や2彩色性との関係の研究に集中した。よってこの方面については良い結果が得られたものの、当初予定していた題材についてはやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
正則量子グラフの連結性や二部性の特徴付けが整ったため、これを土台にエクスパンダー量子グラフを導入してその特徴付けや諸性質を明らかにし、量子情報理論の量子エクスパンダーチャネルとの関係を調べる。 2024年度は5月下旬以降Waterlooに長期出張する予定であり、量子グラフの専門家も多いWaterlooの研究グループとの積極的な議論を通して、エクスパンダー量子グラフの構成や具体的な量子グラフの分類、作用素環の包含列の量子グラフとしての振る舞いなどについての研究を進めていく。
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