研究実績の概要 |
アゼチジンは歪んだ構造に起因して独特な極性や剛直性を示すため、創薬科学の分野で注目を集めてきた。今回我々は、光酸化還元触媒/コバルト触媒/ブレンステッド酸触媒の協働触媒系とビニルスルホニル配向基を活用することで、アルキルアミンからアゼチジンを合成する手法を開発した。本手法は、次の3つの過程を経て窒素γ位炭素-水素結合をカルボカチオン等価体に変換する。1)系中で発生したコバルトヒドリド種が、窒素上に導入されたスルホニル基のアルケンに対して金属ヒドリド水素原子移動(MHAT)を引き起こす、2)生成した炭素ラジカルが窒素γ位炭素-水素結合に対して分子内1,6-HATを引き起こす、3)光酸化還元触媒により、窒素γ位に発生した炭素ラジカル種はカルボカチオン等価体に一電子酸化される。この過程により生成したカルボカチオン等価体とスルホンアミド部位が分子内求核置換反応を起こすことでアゼチジンが得られる。生成物に含まれるスルホニル配向基は、容易に取り外すことができるため、入手容易なアルキルアミンから複雑かつ高度に官能基化されたアゼチジンを一挙に合成することができた。また、本反応系において、外部求核剤をカルボカチオン等価体と反応させることが可能であった。この手法により、アミンγ位の官能基化が可能になり、アミン求核剤を反応させることで、1,3-ジアミンが、アルコール求核剤を反応させることで1,3-アミノアルコールを合成することができた。
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