研究課題/領域番号 |
23KJ1369
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中島 弘貴 京都大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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キーワード | 反応性アストロサイト / 脳虚血 / MCAO / RNA-seq |
研究実績の概要 |
脳虚血時に誘導される反応性アストロサイトは病態抑制に寄与するような抗炎症性を示すことが知られている。本研究では、この抗炎症性アストロサイトの誘導機構および病態抑制機構を分子レベルで明らかにすることを目指す。 今年度はまず当初の計画に従い既存のRNA-seqデータセットなどを用いて抗炎症性アストロサイトの上流分子の同定を試みた。しかしながら、1時間虚血という強い傷害を与えているこれらのデータセットでは炎症促進性のアストロサイトも多く含まれてしまい、抗炎症性に関わるシグナルを特定することが困難であった。一方で15分虚血という組織的傷害が生じない軽度の虚血によりアストロサイトは保護的な機能を獲得することが報告されていることから、自らこの15分脳虚血モデル (MCAOモデル) の作製を行った。さらにマウス脳からのFACSによる細胞分取手法を習得し、アストロサイトを単離してRNA-seqを行った。解析の結果、保護的機能が知られている分子の発現増加が確認され、また上流リガンドを推定する解析からこれらの発現プロファイルの上流分子を推定することができた。これらの上流分子については脳虚血時に発現が増大することをリアルタイムPCRによっても確認できた。さらにRNA-seqデータからは虚血時のアストロサイトにおいて主に発現する受容体サブタイプも特定することができ、リガンドから受容体、そして下流の保護分子へと一連のシグナルがアストロサイトによる保護機能に関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脳虚血下でのアストロサイトを解析するためのMCAOモデル作製、FACSによる細胞分取、RNA-seqなどの必要な手技を一通り習得した。さらにRNA-seqの結果から上流分子の候補を見出し、実験的な実証も進めることができた。また今後これらの寄与を介入実験によって明らかにするためのプラスミド作製やウイルス作製についても完了した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度RNA-seq解析から見出した分子の病態への寄与について明らかにするため、次年度はウイルスベクターを用いたアストロサイト特異的ノックダウンによってこれらの分子の脳虚血病態への関与を評価する。また想定している分子シグナルがアストロサイトで機能していることを調べるため、初代培養アストロサイトを用いたin vitroでの検討も並行して進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬の使用量が想定より少なかったため次年度使用額が生じた。本資金は次年度の試薬および実験器具の購入に使用予定である。
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