研究実績の概要 |
今年度は主に、最終目的であるEu添加GaNからのレーザ発振に向けて、発光効率が高いEu発光中心の形成に取り組んだ。その結果、従来条件で作製されたEu添加GaNと比較して、弱励起下において最大で5.1倍のEu積分発光強度が得られた。 具体的には、Eu添加GaNを有機金属気相エピタキシャル法で成長した後に、1100℃程度の高温下で熱処理を行うことで、Eu周辺の原子配置が変化し、これによりEu発光中心が再構成されることがわかった。特に、自由キャリアの捕獲断面積とEuへのエネルギー輸送効率が高く、高効率なEu発光に寄与すると考えられている発光中心 (OMVPE7, OMVPE8) は、高温熱処理により、その存在比率が大きく増大することがわかり、これにより大きな発光増強が得られた。 さらに、詳細な光学特性評価を行った結果、これまでOMVPE-8の一部であると考えられてきた発光中心が、異なる発光中心であることを見出し (OMVPE-Xとした)、その存在比率が高温熱処理により一桁増加することを明らかにした。また、本発光中心は、OMVPE7やOMVPE8よりも明瞭に高い発光効率 (大きな自由キャリア捕獲断面積とEuへの高いエネルギー輸送効率) を有していることがわかり、Eu発光の高効率化に重要な発光中心であることを明らかにした。 今後の熱処理条件 (温度、時間、圧力等) の最適化により、高効率な発光中心をさらに選択的に形成できると期待される。
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