研究課題/領域番号 |
23KJ1469
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
橘 優汰 大阪大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
|
キーワード | トキソプラズマ / CRISPRスクリーニング / CRISPR/Cas9 / 寄生胞膜 / インターフェロン / 病原性遺伝子 / 寄生虫学 / 宿主・病原体相互作用 |
研究実績の概要 |
トキソプラズマの病原性分泌タンパク質であるロプトリータンパク質およびデンスグラニュールタンパク質を対象にC57BL/6マウスにおいて生体内スクリーニングを行なった。その結果、新規デンスグラニュールタンパク質GRA72を原虫の生体内適応に重要な遺伝子として同定した。GRA72欠損原虫を作製したところ、寄生胞に形態学的異常を呈しマウスに対する病原性が消失した。蛍光抗体法による観察をおこなったところ、GRA72は寄生胞膜上におけるpore-forming proteinであるGRA17およびGRA23の局在の制御に関与しており、寄生胞膜の恒常性維持に必須であることが明らかになった。さらに、トキソプラズマの代謝、内膜系、核関連遺伝子に関しても同様に生体内CRISPRスクリーニングを行ない、それぞれ多数の新規病原性遺伝子を同定することに成功した。 続いて本スクリーニング系を宿主・病原体相互作用の解析に応用するために、野生型マウスとⅡ型インターフェロン(IFN-γ)受容体欠損マウスにおいて生体内スクリーニングを行なった。その結果、ROP5、ROP18、GRA12、GRA45といった既知の宿主IFN-γ依存的な病原性因子を検出することに成功した。これに加えて、RON1、RON11、GRA23、UFM化経路関連遺伝子が新規のIFN-γ依存的病原性因子であることを証明した。以上より、病原体の遺伝学的スクリーニングと宿主遺伝学を組み合わせることが可能であるという概念の実証に当該分野において初めて成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初想定していた以上の数の病原性遺伝子を発見できたため。
|
今後の研究の推進方策 |
トキソプラズマの有する8000強の遺伝子のうち、いまだに多くの遺伝子が機能不明である。残された第3の分泌オルガネラであるマイクロネームを含めたアピカル複合体や局在不明遺伝子群においても生体内CRISPRスクリーニングを行うことで、新規病原性遺伝子を探索・同定する。スクリーニングのヒットとして得られた機能不明遺伝子に関しては、原虫感染における基本的な要素である侵入、複製、脱出、運動、接着などにおける役割を評価することで細胞生物学的な知見を得る。特にマイクロネームから放出されるマイクロネームタンパク質は機能不明なタンパク質が大半を占め、病原性における役割が他の分泌タンパク質であるロプトリータンパク質、デンスグラニュールタンパク質と比較して確立されていない。病原性に重要なマイクロネームタンパク質を同定し、作用機序を明らかにすることを目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
想定よりも早期に生体内スクリーニグ系の確立に成功したため。次年度の遺伝子改変原虫の作製および解析に使用する。
|