研究課題/領域番号 |
23KJ1477
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
三木 颯馬 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
|
キーワード | 磁気スキルミオン / ブラウン運動 / MOKE顕微鏡 / 電圧制御 |
研究実績の概要 |
トポロジカルに保護された磁気構造であるスキルミオンは質量をもつと示唆されているが現在まで質量の正確な実験値が求められていない。本研究ではスキルミオンの並進運動の高速測定を実現し、質量に起因した並進運動による周波数特性を観測することでスキルミオンの質量の値の同定を目的とし、研究を開始した。 2023年度は高速カメラを導入することでスキルミオンの拡散を1kHzまで観測することに成功した。この結果、従来の10倍から100倍大きい拡散係数を観測することに成功した。またスキルミオンの拡散における速度は周波数依存性を有することを明らかにした。さらにブラウン運動の軌跡に対してフラクタル解析を行い、速度の周波数依存性は試料中のポテンシャル揺らぎに起因することを明らかにした。 1kHzより高周波領域での測定を行うために磁気光学顕微測定装置の作製を行った。スキルミオンを発現させるための温調機を組み込むことでスキルミオンの観測に成功した。さらに高周波測定可能なフォトダイオードと、高周波電流・電圧印加を可能とするプローバーを配置した。 高周波電圧印加に向けて、イオンマイグレーションに依存しない電圧印加素子の作製を行った。強磁性層との界面にPtを挿入することでMgO層からの酸化を防ぐような試料を作製した。その結果、電圧スイープに対してヒステリシスのないスキルミオンの生成消滅を実現した。しかしながら磁気ヒステリシス曲線は電圧によって変化せず、またスキルミオンの大きさにも変化がない。すなわち界面Dzyaloshinskii-Moriya相互作用を電圧変調していると示唆される結果を得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スキルミオンの拡散について、今まで30 Hzまでのダイナミクスしか測定されてこなかったが、1kHzまで周波数範囲を広げることでフラクタル解析などの周波数解析を初めて可能とし、より高周波領域での測定に向けた拡散の解析方法を確立した。また装置の作製が完了し、測定を行う準備が整った。ヒステリシスのない電圧効果を実現したことで高周波電圧印加に向けたスキルミオンの素子作製の指針が示された。
|
今後の研究の推進方策 |
イオン注入や追加成膜によって作製したポテンシャルポケットに閉じ込めたスキルミオンを完成した高速磁気光学顕微測定装置を用いて観測する。そしてフィードバック制御によりそのポケット内の運動の周波数特性を測定し、スキルミオンの質量の同定を試みる。さらに1次元ポケットと2次元ポケットの周波数応答の違いから質量の非対角項を評価する。また別アプローチとして高周波電圧を印加し、それによって誘起されるスキルミオンの高周波ダイナミクスの解明を目指す。
|