研究課題/領域番号 |
23KJ1483
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
温 若寒 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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キーワード | オンライン脱抑制 / 動機づけ・オンライン脱抑制モデル / ネット掲示板 / 「いいね」 / 意見表出 |
研究実績の概要 |
オンライン脱抑制は、通常では行わない行動や言わない発言を、ネット上ではすることが許容されると考える状態である。オンライン脱抑制がどのようにネット上での行動に影響を及ぼすかについて、従来、直接影響説がある一方で、より精緻化する「動機づけ・オンライン脱抑制モデル」があげられる。本年度では、特定の炎上事件を題材にした架空の掲示板スレッド用いて、参加者がリプライ投稿にリアクション(例えば「いいね」)をつけることができる状況で実験を実施し、動機づけ・オンライン脱抑制モデルの妥当性を検証した。 結果として、参加者はネット掲示板の投稿を目にした際、投稿に対するポジティブな態度や刺激感(投稿が刺激的なものだという感想)が「いいね」行動の動機づけとなるが、その過程がオンライン脱抑制に調整されることを明らかにした。つまり、投稿に対して「いいね」をしようとする動機づけがある場合のみ、強いオンライン脱抑制を経験すれば、「いいね」をする可能性が高まることが分かった。一方で、投稿に対してネガティブな態度を持つ場合、オンライン脱抑制の高さにかかわらず、「いいね」をする可能性がほとんどない。これらの一連の研究を通して、オンライン脱抑制がどのようにネット利用者の行動に影響を及ぼすかにより正確な説明を提供する。 今年度の研究成果を日本社会心理学会第64回大会と第3回計算社会科学会で発表した。そして、2つの論文としてまとめ、『Behaviour & Information Technology』誌と『Japanese Psychological Research』誌に投稿し、今査読中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、オンライン脱抑制の影響メカニズムについて、実験的なアプローチで「動機づけ・オンライン脱抑制モデル」の妥当性を検証する予定であった。複数の予備実験と5つの本実験を実施し、概ね目標に達成した。研究の成果を2つの学術論文としてまとめ、英語雑誌に投稿した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、投稿論文の掲載を目指した査読対応と博士論文を執筆する予定である。また、オンライン脱抑制の引き起こす要因について予備的な検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
投稿論文の執筆が予定よりやや遅くなり、論文の掲載料は次年度で使用する予定である。
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