研究課題
がんワクチン療法は,次世代のがん治療法として期待される一方で,実用化は進んでいない.一般に,ワクチンは,抗原とアジュバント(免疫賦活化剤)からなる.これまでに本研究では,乳がんペプチド抗原CH401と,アジュバントとして汎用されるPam3CSK4を複合化したセルフアジュバンティングワクチンについて検討し(共有結合ワクチン),このワクチン候補が,抗原選択的に強い免疫反応を誘導することを確認した.加えて,この共有結合ワクチンを脂質ナノ粒子に搭載し,免疫細胞へ効率的に送達できる100 nmサイズ,球状に成形することで,ワクチン機能が向上することを明らかにした(第1世代脂質ナノ粒子ワクチン).本研究では,第1世代脂質ナノ粒子ワクチンのさらなる高機能化を目指した.すなわち,100 nmサイズの脂質ナノ粒子に対し,CH401とPam3CSK4からなる共有結合ワクチンに加えて,追加のアジュバント(α-GalCer/MPLA/CpG ODN 1826)を共搭載し(第2世代脂質ナノ粒子ワクチンワクチン),その機能を評価した.マウス免疫実験の結果,第2世代脂質ナノ粒子ワクチンワクチンは,抗原選択的な強い免疫反応を誘導しながら,共搭載するアジュバントの種類に応じた特徴的な免疫反応を惹起することがわかった.特に,α-GalCerを共搭載することで,第1世代脂質ナノ粒子ワクチンよりも顕著に高い抗体価の誘導,MPLAとCpG ODN 1826の両方を共搭載することで,Th1バイアスな免疫応答の誘起に成功した.さらに,これら2つのワクチン候補は,ヒト化マウスに対する免疫実験においても,抗原に対する免疫応答を誘導し,ヒトに対しても確かに機能することを示した.本研究成果は,効果的なワクチン創製のためのワクチン設計指針を提示し,がんワクチン実用化の実現に向けて新たな展開をもたらすものであると期待できる.
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