研究課題/領域番号 |
23KJ1524
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岡本 直樹 大阪大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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キーワード | 膵がん / 血管内皮幹細胞 / 移植 / 内皮間葉転換 / 細胞間コンタクト |
研究実績の概要 |
膵がんの治療効果を高める方法として、血管内皮幹細胞の投与による、腫瘍抑制効果を確認した。マウス膵がん皮下腫瘍モデルを作成し、血管内皮幹細胞の移植を行い、腫瘍サイズおよび組織染色による血管構造の変化を評価した。さらにGFPマウスの血管内皮幹細胞を用いて、移植による血管生着の様子を現在確認した。血管内皮幹細胞は膵がん組織内に生着していた。またtomatolectinの還流により、生着した血管内皮幹細胞が血流をを持った血管として機能しているのかも確認が完了した。現在、血管内皮細胞移植時の生存率の評価やゲムシタビン投与時の生存率変化の確認を行っている。 また、膵がんの血管においては、その血管が正常の機能を果たさず、膵がんの生存を補助することや治療抵抗性に寄与していることが近年明らかになってきている。そこで、今回の研究では、血管を構築している血管内皮細胞の内皮間葉転換(EndMT)という現象に着目した。マウス膵がん細胞の培養上清が内皮細胞に与える影響を評価した。細胞間コンタクトにおいて直接的または間接的に起きる、内皮間葉転換様の発現変化を確認した。マウス及びヒトの膵がんシングルセルデータで2次解析を行い、内皮間葉転換を起こした細胞集団に発現する遺伝子を解析した。ヒトおよびマウスで共通する遺伝子群が発見された。トランズウェルアッセイプレートを用いた間接的なコンタクトによる影響の評価では、間葉系マーカーで遺伝子の発現変化が確認された。また、直接的なコンタクトによる評価では、接触面において内皮細胞マーカーの消失と間葉系マーカーの獲得が確認された。今後、網羅的遺伝子発現解析を行い、膵がんの内皮間葉転換に関わるシグナルの詳細を追う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膵がんに正常の血管内皮細胞を移植し、生存率の改善を図るという実験において、まず、実験系の確立を試みた。正常膵臓から血管内皮細胞および血管内皮幹細胞を単離することがフローサイトメトリーを用いることで達成された。また、単離した血管内皮細胞を膵がん組織に移植することの確立も、GFP標識した血管内皮細胞を用いて、さらに蛍光免疫染色による確認から達成されている。膵がん組織内に生着した血管内皮細胞の血管としての機能は、tomatolectinの還流により、確認済みであり、今後の解析につなげることができた。 膵がん組織内の内皮間葉転換に関する解析は血管内皮細胞を標識したマウスを用いることでin vivoでの評価は達成されたが、シングルセルデータの解析においては、用いる解析プロトコールは確立されておらず、プロトコールのさらなる拡充が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の解析においては、膵がんに血管内皮細胞を移植する実験については、血管内皮細胞と抗がん剤を同時に処置した場合に生存率に影響するのか、また移植した血管内皮細胞が組織にどのような影響を及ぼすのかについて解析を進める。また移植した血管は、内皮間葉転換を起こし、血管としての機能が損なわれている可能性も含め、解析を行う。さらに内皮間葉転換に関わるシグナルの阻害剤と抗がん剤を同時に投与することで、担癌マウスの生存率の改善が見られないか検討する。シングルセルデータについては血管内細胞分画のうち内皮間葉転換が誘導された分画について適切なクラスターマーカーをピックアップすることで解析を進める予定である。また内皮間葉転換を誘導した際に観察される、遺伝子発現変化についてin vivo,in vitroの両方の系を用いることで明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定した、マウスと試薬代金については、予想される使用額を下回った。またPCとPC周辺機器の購入を予定していたが、次年度での購入を予定したため、実際の執行額は予定より、少なくなっている。
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